平成30年度事業報告

事業報告

第20回音楽部会演奏会 歌劇「みづち」

 二年に一度開催している音楽部会演奏会が、去る平成31年2月10日(土)16:30から、高崎シティーギャラリーコアホールにて、満席のお客様をお迎えして開催されました。

 出演者全員の記念写真


 今回の公演では押黒族に捕らえられたみづちを小太郎が救出するという脚本の丹治富美子先生の構成はそのままに、日照りに苦しみ天に祈る人たちや、弟の無事を願いながら送り出そうと葛藤する姉や、小太郎のために黒髪を切り落としてまでも共に戦おうとする夕月姫の心情などを、繊細な和音を用いて表現した白樫栄子先生の音楽に焦点を当てて公演に臨みました。


 昨年八月に開催された夏季研究会では、作曲の白樫栄子先生を講師にお招きして、作曲家の観点からの解釈と音楽表現についての講習をしていただきました。そのため、特に第三幕の最後の合唱が今までの公演とは異なり、歌劇のクライマックス(コーダ)としての高揚感を押さえ、豊かで深い感謝に溢れた祈りの音楽(コラール)として演奏されました。今回の公演でも脚本の丹治富美子先生と作曲の白樫栄子先生にお越しいただいていたため、舞台上でご紹介させていただきました。


 みづちが救出され、村に豊かな実りと平和が戻ってきたことへの感謝の合唱の場面では、客席のあちこちで涙を拭う人たちの姿が見られました。特に練習会場として大変お世話になった高崎高等特別支援学校の生徒さんを多数お招きしましたが、彼ら彼女らの頬を伝わる涙には本当に心動かされました。


 小太郎の恋人の夕月姫を演ずる田中ちひろ先生(高高特)と、小太郎を演ずる塚田孔右先生(太田工)


 (右から)みづちを救出する方法を授ける黒姫を演ずる大小原美幸先生(高高特)、黒姫の供人で鳥の化身として小太郎の道案内をしてきた小川唯佳先生(利根商)、兒玉理紗先生(高女)、斎藤真里奈先生(沼女)


 指揮・演出の朝倉康雄先生(前橋西)と、合唱の出演者


 雨乞いの祭りの中で踊る村人たちを演ずる合唱メンバー


 出演者、伴奏・打楽器、音響・照明、受付、役員総勢46名での記念写真

H30年度 講演会

平成30年度講演会


 平成31年1月29日(火)14:00~群馬県立玉村高等学校において、新潟大学伊野義博教授による「口唱歌から展開する音楽教育」という演題で講演会が行われました。


唱歌(口唱歌)とは楽器の旋律・リズム

に一定の音節をあてて口で唱えることである。例えば、太鼓で「ドドンコドンドン」と口で唱えれば、音色やリズム、奏法などを丸ごと伝えることができるとても便利なものである。日本音楽の伝統や文化を伝承するために使われてきた。

小学校音楽科の学習指導要領解説では、口唱歌を活用するよう示されており、中学校では言葉と音楽との関係や、姿勢や身体の使い方についても配慮するとともに、口唱歌を用いるよう示されている。このように、小中学校で学びを経た生徒が高校に入学してくることを踏まえ、高校の音楽の授業を考える必要がある。高校の解説では、音楽のそれぞれの特徴には、音楽を形づくっている要素による特徴、各音楽に固有の発声法・歌唱法、口唱歌、楽器及びその奏法や調弦法、記譜法などがあると示されている。口唱歌は日本の中だけで留まるのではなく、そこから見えてくるグローバルな視点をもてるように、学校教育の場で多く用いられるように求められている。

口唱歌は、大きくソルミゼーションとして捉えることができる。音楽の演奏に密着し口頭で伝えられる場合(口頭性)や、楽譜的機能をもつ場合(書記性)がある。ソルフェージュの一環として音楽教育の中に取り入れられたものとしては音名唱や階名唱があるが、日本のソルミゼーションは口唱歌だと言える。雅楽や能楽、民族芸能の楽器として、太鼓や箏、三味線などの楽器の習得に口唱歌が使われてきた。教育の現場で考えられている唱歌は、図で言うならば、音色唱法の旋律唱法、乞一唱法、音色唱法のリズム唱法だ。

実際に謡の鼓、箏の曲の口唱歌を確認しながらエア演奏してみました。

・謡《松虫》

・箏曲《さくらさくら》

・箏曲《六段の調》

音楽授業のパラダイムを転換するには、その一方向性として図のような形を提案する。まず、次の四つの視点である。

体験や活動を主としてきた授業を深い経験につなぎ、音楽性を深化させること
歴史の点描ではなく文化変容へと視点を転換し、音楽や文化を通史的に捉えること

 ③固有性と共通性といった視点を推進し、俯瞰的な視野を持った横断的な授業構成をすること
④三点比較など、音楽を複眼的に観て、音楽文化の多様性と創造性を学ぶこと

このためには、教授Teachingから対話Dialigue、さらにTrialogueへと授業を変えていくことが必要となろう。

口唱歌の教科指導や教育においての可能性から今後授業で求められる展望まで、先生方が交流を深め学び合いや研究することができる環境を益々充実させ、他県との交流にも繋げて行けるような講演会となりました。詳細は音楽研究をご覧下さい。

 参加者
(敬称略・順不同)

清水 郁代(吉井)    大熊 信彦(太田女子)  上田 裕信(太田東)  東 喜峰 (前橋)

住谷 伴(前橋商業)   森田 尚子(前橋東)   兒玉 理紗(高崎女子) 須田 諭美(吉井)

黒岩 伸枝(高崎)    安斉 太(高崎商業)   伴野 和章(太田東)  橋詰 詩織(太田女子)

斎藤真里奈(沼田女子)  坂本 将(館林女子)   野口 瑞穂(大間々)  紺野 裕子(伊勢崎清明)

井上 春美(藤岡中央)  勝山 英城(万場)    五十嵐桃子(長野原)  川上 寛子(玉村)

引田 麻里(市立太田)  藤嶋 啓子(関東学園)  鈴木香奈子(桐生南)  小川 唯佳(利根商業)



平成30年度 第3回 授業研究会

平成31年1月29日(火)、群馬県立玉村高等学校において、川上寛子教諭による音楽の研究授業が、「箏を奏でよう~たまむら歌留多に ふしをのせて~」という題材名で行われました。



授業研究係より、
研究授業を観る「研究協議の視点」として、告示された次期学習指導要領を踏まえて次の3つを提案しました。

1.課題の質やレベルは、本時の目標を達成するために適切であったか

2.本時の展開で、主体的・対話的で深い学びとなっていた場面はどこか

3.「育成を目指す資質・能力」、「評価の観点のイメージ」、「新学習指導要領」と関連する指導と評価の計画はどこか



研究協議では、各グループから以下のような意見が出されました。

・授業全体を通して生徒と教員との対話が常にあってよかった。それが主体性につながっていた。

・生徒の発言を受けて展開につなげ、生徒の自己肯定感を高めていて、生徒が自分たちで取り組みたいという気持ちも高まっていたと感じた。

・イメージを言葉にすることの難しさを感じた。内容を深めようとするとさらに課題があると思われるが、本時では生徒の実態に合わせた指導となっていた。

・生徒の「馴染みがある」という発言の部分を取り上げて、深めてもよかったと感じた。

・音楽の授業以外で、生徒がもっているイメージを生かしたり深めたりできるのがよい。教科横断的な授業としても生かせるもので、様々な深まりがあった。

・生徒と教員との関係性がとてもよく、その対話で授業内容が深まっていたが、生徒同士の対話による深まりがさらにあるとよいと感じた。

・楽器環境が整っていて、聴き比べなどができて、授業中の生徒の発言も多く、雰囲気よく進んでいた。

・地域と関連する教材を使って題材を指導し、学習するのがよかった。生徒それぞれがイメージをもつことは、トレーニングのように指導していくと、さらに音楽の言葉の広がりが出てきたり、音楽を形づくっている要素についても他の題材でも活用できたりすると感じた。

・歌留多の札を読む際に、生徒も教員も音階に合わせて読み方が変わっていたので、それを創作の学習の際に生かせる方法を考えていきたい。

・教員が「次はこれをやる」と伝えるのではなく、「次はどうする?」ときいて授業を進めていたことが特によかった。

・生徒指導がよく行き届いていて、学校のよさが伝わった。教員の温かみが感じられた。

・箏の音色を大切にしていることが、生徒の演奏に表れていた。

・楽しい授業で、授業の展開の仕方に工夫を感じた、生徒の指名の方法がよかった。

・評価が難しいと感じた。

・全員がさらに学習内容の中に入っていくという意識をもてるようにすることも大切だと感じた。

・生徒が意見を出しやすい雰囲気だった。

・生徒が、感じ取った音階の雰囲気を説明する際の教員の言葉かけがよかった。

・音階選びを範唱と一緒に行えたのがよかった。

・楽器の準備などが大変だが、生徒も仕組みが分かると楽しいと感じられると思った。しかし時間配分が難しい。

・生徒指導と良い雰囲気の指導の境目が難しい。

・生徒から「中国っぽい」という発言が出る雰囲気や、感性がとてもよいと感じた。

・箏にシールを貼ったり、3列に並べたりするなど、生徒の目線での配慮がされていた。

・今後、歌留多の言葉から創作を行うことは難しいように感じた。

・生徒が移動する場面や唱歌の場面で、初めから班として何を行うのかを決めておいた方が、学習がスムーズだったように思う。

・それぞれの調子のイメージを初めに確認して知識を身に付けてから、歌留多を選んでもよかった。

・生徒全員とさらにやりとりができるような工夫が必要だと感じた。

・グループの評価になってしまう心配もあり、その評価の方法も難しいと感じた。


・「ふしづくり」までは到達できなかったが、歌留多に合った音階を選べる流れは適切だった。

・実際に試しながら選ぶことで、聴く→考える→組み立てるという展開ができると感じた。

・教員が生徒とうまくやりとりをしながら授業を進めていた。我慢強く、コミュニケーションを大切にしていた。

・朗読しながら、それぞれの調子の音階の箏を弾く場面は、本時の授業で生徒が最も集中していた。

・40名弱の生徒だったが、教員が生徒全体をよく見て、ぞれぞれの反応を拾っていたため、生徒の数はもっと少なく感じた。

・「さくらさくら」の弾き比べは、これまで練習してきたからこそ、生徒の反応がよかった。

・活動の自由さの中に、生徒が集中したり生徒の心が動いていたりするタイミングが何度もあった。

・教員のポジティブな言葉かけがよく、生徒の自然な関係が、生徒の心を開いていた。

・創作の手順を問いかけて、生徒から挙がった意見を示すという手立てが適切で、生徒の実態に合っていた。

・板書がシンプルで分かりやすかった。

・音の特徴を捉えるための環境づくりや授業展開についても必要だと感じた。

・内容や質は適切だったが、教員のやりたいことが多過ぎてしまった印象だった。

・「試してみよう」という場面が、もう少しスマートになれるとよかった。

・「さくらさくら」を各調子で演奏するのは、最後の1フレーズでも変化が感じられるため、その部分だけでもよかった。

・イメージを言葉にしたり音にしたりする学習は、レベルの高い内容だったと感じた。

・生徒は学習のゴール地点が見えないまま教員についていっていたように思う。

・生徒の発言は質が高いものも多かったが、そうでない生徒もいた。

・どんな風に「ふし」を付ければよいかということを、さらに具体的に示せるとよかった。

・創作は、言葉に対する「ふし」なのか、全体的なイメージなのかが分からなかった。

・各調子の音を聴いて、生徒の中にイメージはできていたように思う。

・授業内容の理解が困難な生徒に対する言葉かけや、生徒の発言の仕方がよく、対話的な授業だった。

・授業で扱っていた3つの調子は似ていたが、これらを選んだのはどうしてか疑問に感じた。調子の性格の異なるものを選んでもよかった。

・調子の雰囲気について、「少し違う」という印象では、日本らしさ、郷土の音という観点から選択することは難しいと感じた。

・歌留多も8種類あり、多いように感じた。

・箏は音が限定されていて創作を行いやすいと感じた。

・楽曲のまとめ方や音の着地点に、日本らしさを出せるとよい。



研究協議後の指導・助言では、新潟大学教授伊野義博先生、群馬県教育委員会より島田聡高校教育課指導主事、本部会より上田裕信副部会長、大熊信彦副部会長から、それぞれ今後の参考となる貴重なお話を頂きました。

詳細は研究紀要を参照下さい。

参加者
(敬称略 順不同)

清水 郁代(吉井)    大熊 信彦(太田女子)  上田 裕信(太田東)  島田  聡 (教育委員会)

勝山 英城(万場)    兒玉 理紗(高崎女子)  住谷 伴(前橋商業)  黒岩 伸枝(高崎)

引田 麻里(市立太田)  橋詰 詩織(太田女子)  角田 幸枝(榛名)   五十嵐 桃子(長野原)

森田 尚子(前橋東)   武井 康博(伊勢崎商業)    安斉 太(高崎商業)  鈴木 香奈子(桐生南)

小川 唯佳(利根商業)  東 喜峰(前橋)     須田 諭美(吉井)   伴野 和章(太田東)

近野 裕子(伊勢崎清明) 藤嶋 啓子(関学附)   井上 春美(藤岡中央) 野口 瑞穂(大間々)

小川 良介(四ツ葉学園) 松平 康子(尾瀬)    川上 寛子(玉村)   坂本 将(館林女子)

文責:坂本 将(館林女子)

群馬テレビの番組で部会演奏会歌劇「みづち」のPR

 平成31年1月31日(木)20:00から放映された群馬テレビニュースeye8の番組内で、2月10日(日)に高崎シティーギャラリーコアホールで開催される部会演奏会 歌劇「みづち」のメインキャストのみなさんに出演していただき、演奏会のPRをしていただきました。

※写真をクリックすると、YouTubeで放送動画を見ることができます。

当日、音楽監督と演出を担当する朝倉康雄先生(前橋西)、主役の小太郎役の塚田孔右先生(太田工)、夕月姫役の田中ちひろ先生(高崎高等特別支援学校)、みづち役の住谷伴先生(前橋商)、黒姫役の大小原美幸先生(高崎高等特別支援学校)に出演していただきました。本番一時間前に集合して、小太郎役の塚田孔右先生と夕月姫役の田中ちひろ先生には、舞台衣装で出演していただくために、大小原美幸先生に着付けをしていただきました。その後、慌ただしくリハーサルを行い、いよいよ20時20分から本番がスタートしました。キャスターの吉田学アナと三隅有里子アナの、ベテランならではの気遣いに満ちた暖かい雰囲気の中、番組は進行し、9分間のコーナーは無事終了しました。リハーサル終了後、急遽みづちのフライヤーを画面に挿入したり、テロップや問合せ先の変更など、慌ただしい中で対応していただいた報道局次長の瀧本義久さんには本当に感謝いたします。番組を見た方が一人でも多く来場していただけることを楽しみにしています。

第20回音楽部会演奏会 歌劇「みづち」案内



1 日  時  平成31210日(日)

        開場1600 開演1630 (終演予定1830

2 場  所  高崎シティギャラリー・コアホール

 

3 参加者(敬称略)

○キャスト

小太郎:塚田 孔右(太 工) 黒姫:大小原美幸(高高特) みづち:住谷  伴(前 商)

夕月姫:田中ちひろ(高高特) 八重:金田 知子(富 岡) 重 藤:織田 大地(中央中等

黒姫の供人:斎藤真里奈(沼女) 兒玉 理紗(高女) 小川 唯佳(利根商)

村人、武士:合唱から

 

○音楽

指 揮:朝倉 康雄(前西)

ピアノ:秋元 麻美(青翠) 山下 美保(高高特) 大谷 邦子(下仁田)

打楽器:牧野  勇(前東)

 

○合唱

ソプラノ:齋藤 千咲(高高特)  斎藤真里奈(沼 女)  兒玉 理紗(高 女)

齋藤絵里子(安 総)

アルト:力石  泉(二葉高特)  富岡 恵美(安 総)   野口 瑞穂(大間々)
     小川 唯佳(利根商)  橋詰 詩織(太 女)  五十嵐桃子(長野原・嬬恋)

テノール:青栁  亮(桐 女)  坂本  将(館 女)  岡松  亮(館高特)

バ  ス:安斉  太(高 商)  木部  誠(太フレ)  田沼 昌紀(館 林)

 

○スタッフ(部会演奏会担当)

廣澤 秀伸(前 西):総括

朝倉 康雄(前 西):音楽監督、演出総括

大小原美幸(高高特):練習会場手配、衣装

塚田 孔右(太 工):プログラム、演出

引田 麻里(市立太田):庶務、書類作成、練習計画管理、演出

鈴木香奈子(桐 南):チラシ・ポスター、チケット

野口 瑞穂(大間々):会計


4 入場料 一般 1,000円  高校生以下 500


5 後 援

 群馬県教育委員会、上毛新聞社、FM GUNMA、日本放送協会前橋放送局、群馬テレビ