平成30年度事業報告

事業報告

平成30年度第二回理事会

 平成30年9月12日(水)15:00~16:30に、平成30年度第2回理事会が吉井高校会議室にて開催されました。議事として前期諸事業の総括と、後期事業の提案が行われました。まず6月22日(金)に沼田女子高校で開催された斎藤真里奈教諭による第1回授業研究会には、30名の部会員が参加しました。7月11日(水)にベイシア文化ホールで開催された群馬県高等学校芸術祭音楽部門「団体演奏会」には、合唱から4団体、器楽・管弦楽から各1団体、吹奏楽15団体の計21団体が出場しました。8月7日(火)~11日(土)に長野県で開催された第42回全国高等学校総合文化祭(2018信州総文)には、本県から多数の団体が参加しました。その中で本県の藤岡中央高校が自然科学部門で最優秀の成績を修めることができました。来年の全国総文は佐賀県で開催されます。8月22日(金)に吉井高校で開催された夏季研究会には、平成30年度伝統音楽指導者研修会に参加された井田有希子教諭(伊工)と野口瑞穂教諭(大間々)による伝達講習、文部科学省初等中等教育局教科書課教科調査官の飯田勉氏を講師に、「教科書と教科書制度について」の講演、群馬県教育委員会高校教育課指導主事の島田聡氏を講師に、「新学習指導要領に向けた題材構成について」の講義・演習、本年度部会演奏会で取り上げる歌劇「みづち」の作曲家である白樫栄子氏を講師に、「歌劇みづちの作曲者からのメッセージ」の講義・実技演習の研修が行われました。座学による理論学習と演習や実技による抽象を、音楽という形でそれらをいかに具現化して行くかという流れで構成された1日でしたが、参加者にとって非常に有意義な1日となっただけでなく、歌劇みづちに出演する先生にとっても、音楽を表現する上で作曲者の意図を細部に渡って解説していただけたことは、今後の練習に大変参考になりました。予定時間を遥かに超えてまで熱弁いただいた白樫栄子先生には、心から御礼申し上げます。
 続いて後期事業についての提案があり、11月7日(水)に昌賢学園まえばしホール(前橋市民文化会館)で開催される群馬県高等学校芸術祭音楽部門「個人演奏会」の講師として、ソプラノの本島阿佐子先生(国立音大准教授)と、ピアニストの金井美奈子先生を講師としてお招きすことが承認されました。この日の段階では日程が確定できなかった第2回授業研究会は、後日の日程調整により11月15日(木)に、太田高等特別支援学校の北爪優香教諭により開催されることになりました。平成31年1月29日(火)に玉村高校にて開催される川上寛子教諭による第3回授業研究会が午前中に開催され、午後は新潟大学教授の伊野義博氏を講師に招いての講演会が開催されることになりました。また同日の夜に部会新年会を高崎市内で開催することも併せて承認されました。平成31年2月10日(日)に高崎シティーギャラリーコアホールで開催される部会演奏会の企画案として、練習計画、参加者(出演者、スタッフを含む)、演出案、前日・当日の流れ、入場券・ポスターフライヤーデザイン案、入場券販売価格案(一般1000円、高校生以下500円)、チケットノルマ案、後援申請案、広報案が審議され、一括承認されました。10月中旬に各部会員宛にチケット販売の依頼文書が送付されますので、出演者・部会演奏会係スタッフは6000円、当日スタッフ・その他部会員は2000円のチケットノルマにご協力ください。その他として次年度から廃止となる群馬県高等学校芸術祭の次年度以降の名称について複数の案が示されましたが、現在関わりのある他の部会やスポンサーである高文連との擦り合わせが必要なため、本部一任として年内には決定できるように進めて行くことが報告されました。
 議事は以上で終了し、連絡・報告として、全日本音楽教育研究会栃木大会の最終申込〆切が9月20日までとなっていること、〆切以降に事務局が参加者を栃木大会事務局に確認の上、各学校に派遣依頼文書を発行すること、第24回県高総文祭総合開会式が10月20日(土)に開催されること(前日リハーサル)、次回第3回理事会は平成31年3月5日(火)14:00~吉井高校で開催されることが報告されました。

群馬県高等学校芸術祭団体演奏会

  群馬県高等学校芸術祭

  音楽部門団体演奏会(第42回県民芸術祭参加)

  日 時  平成30年7月11日(水) 10:00~

  会 場  ベイシア文化ホール(大ホール)

  主       群馬県高等学校文化連盟・群馬県高等学校教育研究会音楽部会


1 内容(プログラム)

○ 器楽(和太鼓)の部

1 群馬県立渋川特別支援学校

         童祭

         夢幻

○ 合唱の部

 1     東京農業大学第二高等学校(指揮 原 鏡)
     翼      /
作詞 みなづきみのり 作曲 北川 昇
     
糸    /作詞・作曲 中島みゆき
 2    群馬県立太田高等学校(指揮 増尾和俊)
       夢をあきらめないで   /作詞・作曲 岡村孝子 編曲 北川 昇
 3   群馬県立太田女子高等学校(指揮  多田あやか)
          同声合唱とピアノのための「とおく」より 4 とおく   /作詞 谷川俊太郎 作曲 鈴木輝昭

 4   群馬県立渋川女子高等学校高等学校(指揮  荒木奈都子

            無伴奏女声合唱のための「万葉恋歌」より 1春の苑 4天の火 5山桜花
         /作詞 大伴家持-和歌 ・狭野弟上娘子-和歌 ・大伴家持-和歌  作曲 信長高冨

○ 管弦楽の部

1    群馬県立中央中等教育学校指揮  J.バドリック

        交響曲第7 4楽章 フィナーレ アレグロ   /作曲  A.ドヴォルザーク

2    群馬県立桐生女子高等学校指揮   青栁 亮

        バレエ音楽「くるみ割り人形」より「雪片のワルツ」      /作曲 P.チャイコフスキー

○ 吹奏楽 午前の部

1    群馬県立前橋東高等学校指揮 牧野 勇)  
        交響曲「モンタージュ」   /作曲 P.グレイアム

2    群馬県立館林女子高等学校指揮 坂本 将)

        乱世の神威 幸村   /作曲 樽屋雅徳

3    群馬県立前橋女子高等学校(指揮 笠原新一)

      BEACH~自然の中で…   /作曲 山本教生

4    群馬県立藤岡中央高等学校指揮 小林由佳

       コンサート・マーチ「虹色の未来へ」    /作曲 郷間幹男

      オーメンズ・オブ・ラブ    /作曲 和泉宏隆

5    前橋市立前橋高等学校 指揮  米山伊織)

       ラ・フォルム・ドゥ・シャク・アムール・ションジュ・コム・ル・カレイドスコープ      /作曲 天野正道

6    伊勢崎市立四ツ葉学園中等教育学校(指揮 小川良介)

      道化師の朝の歌   /作曲   M.ラヴェル

○ 吹奏楽 午後の部

1    高崎健康福祉大学高崎高等学校指揮 吉田宏昭)

      交響詩「陰のない女」    /作曲  R.シュトラウス 編曲 田村文生

2    群馬県立太田東高等学校指揮 伴野和章)

      コンサート・マーチ「虹色の未来へ」  /作曲 郷間幹男

      「ダフニスとクロエ」第二組曲 より    /作曲   M.ラヴェル 編曲   佐藤正人

3    群馬県立渋川女子高等学校 (指揮  大沢 紘)

      秘儀Ⅱ         /作曲   西村 朗

4    群馬県立桐生南高等学校指揮   鈴木香奈子)

      鳥之石楠船神~吹奏楽と打楽器群のための神話        /作曲   片岡寛晶

5    群馬県立富岡高等学校 (指揮  根岸栄一)

         ミュージカル「ミス・サイゴン」より        /作曲  C.M.シェーンベルグ

6    馬県立吉井高等学校指揮  戸松久美)

         喜歌劇「微笑みの国」セレクション       /作曲  F.レハール 編曲  鈴木英史

7    群馬県立太田高等学校指揮  新保 恵)

         「交響曲」より        /作曲  矢代秋雄  編曲  根本直人

8   群馬県立前橋西高等学校指揮   朝倉康雄)

      民衆を導く自由の女神          /作曲  樽谷雅徳

9    太田市立太田高等学校指揮  矢野和弘)

        吹奏楽のための交響的断章         /作曲  福島 和

10   群馬県立伊勢崎高等学校指揮  前田英一)

       カプレーティとモンテッキ ~「ロメオとジュリエット」その愛と死~      /作曲  天野正道

11   群馬県立太田女子高等学校指揮  内堀昭雄)

         富士山 -北斎の版画に触発されて-            /作曲  真島俊夫

12   群馬県立高崎高等学校指揮  西村淳也)

         ブラジル風バッハ第1番          /作曲  H.ヴィラ=ロボス  編曲  西村淳也

13   群馬県立西邑楽高等学校指揮  根岸玲恵)

            風姿花伝~秘すれば花~         /作曲  福島弘和

14   群馬県立伊勢崎商業高等学校指揮  武井康博)

            梁塵秘抄~熊野古道の幻想~        /作曲  福島弘和

15   群馬県立高崎東高等学校 指揮  稲毛信哉)

            中国の不思議な役人           /作曲  B.バルトーク

~講師プロフィール~

木幡 亮仁(こわた あきひと) クラリネット

   元エジプト国立カイロ歌劇場管弦楽団、首席クラリネット奏者。武蔵野音楽大学卒業。 桐朋学園大学研究科修了。ドイツ・フライブルク音楽大学卒業。ドイツ・フォルクヴァング芸術大学ソリスト課程にて卒業と同時に満場一致でドイツ演奏家国家資格を取得。在学中、ボーフム交響楽団とコープランドのクラリネット協奏曲を共演し好評を博す。今年5月に拠点を日本に移し、演奏の傍ら個人、吹奏楽、オーケストラ等での後進の指導に力を入れている。

猿谷 友規(さるや ゆうき) バリトン

   国立音楽大学卒業。全国共同制作プロジェクト歌劇「蝶々夫人」にソリストとして出演。高崎公演では同オペラ合唱団の指揮者を務めた。日本歌曲の研究に取り組み「テノールとバリトンが歌う日本のうた」に出演。合唱指揮者として、審査員や県内外の複数の団体にて音楽監督、常任指揮者、ヴォイストレーナーを務めている。また、器楽作品の指揮を学び、オーケストラとソプラノの為の作品等を研究している。



2 当日係役員

総   務         清水(吉井) 須田(吉井)

総   括         松村(桐特) 牧野(前東)

開場前準備       引田(市立太田)

受付・接待                 青栁(桐女) 松本(太女) 桐女・太女生徒

大ホールドア係       青栁(桐女) 飯嶋(渋女) 坂本(館女) 渋女・館女生徒

ステージ                    牧野(前東) 前田(伊勢崎) 前東・伊勢崎生徒

出演者誘導             武井(伊商) 伴野(太東) 橋詰(太女) 太東・太女生徒

打楽器誘導             武井(伊商) 米山(市立前橋) 伊商・市立前橋生徒

リハーサル室ドア係    武井(伊商) 鈴木(桐南) 荒木(渋女) 桐南・渋女生徒

駐 車 場               吉田(健大) バドリック(中央中等) 健大・中央中等生徒

アナウンス・計時        引田(市立太田) 戸松(吉井) 野口(大間々)

                      来場部会員全員



3 総括

 本年度は、吹奏楽による参加が昨年度より4団体増えた。各高校の吹奏楽に対しての熱心な取組とさらなる技術向上への想いが参加校の増加につながったものとみられる。本年度の講師は、合唱及び器楽演奏を専門分野とする方をそれぞれ1名ずつ招聘し、講評をいただいた。クラリネット奏者の木幡亮仁先生からは、もう一度スコアをよく見ることで曲の中での自分の役割を再認識し、さらに録音を聴いたり、プロの演奏を聴くことでよりクリアにしていくとよいとのアドバイスを頂いた。またバリトン歌手の猿谷友規先生から、主に歌唱のテクニックに対する具体的なアドバイス(声の支え、チェンジなど)の他、ホール全体の空間をより意識することや、舞台裏での過ごし方等、演奏者としての心構えについても細かな部分まで指導を頂いた。運営に携わった役員の先生方のご協力おかげで、今年も運営はスムーズに行われた。この場をお借りして感謝申し上げます。



4 参加者(敬称略・順不同)

清水郁代(吉井) 廣澤秀伸(前西) 須田諭美(吉井) 大橋佑香(渋特) 福田 望(東農大二)

増尾和俊(太田) 橋詰詩織(太女) 多田あやか(太女) 荒木奈都子(渋女) J・バドリック(中央中等)

青栁 亮(桐女) 牧野 勇(前東) 坂本 将(館女) 松井瑞樹(前女) 小林由佳(藤岡中央)

米山伊織(富岡) 小川良介(四ツ葉学園) 吉田宏昭(健大高崎) 伴野和章(太東) 飯嶋 肇(渋女)

撹上詩織(桐南) 鈴木香奈子(桐南) 茂木孝浩(富岡) 戸松久実(吉井) 朝倉康雄(前西)

引田麻里(市立太田) 車﨑優香(伊勢崎) 前田英一(伊勢崎) 黒岩伸枝(高崎) 西村淳也(高崎)

根岸玲恵(西邑楽) 武井康博(伊商) 稲毛信哉(高東) 東 喜峰(県立前橋)



                                                                                                                      文責:牧野 勇(前東)


平成30年度 第1回 授業研究会

平成30年6月22日(金)、県立沼田女子高等学校において普通科英数コース1年1組の生徒により音楽Ⅰ「イタリア歌曲の特性や旋律の美しさを感じ取って、歌唱表現を工夫しよう」という題材名で歌唱の授業が行われました。


(1)授業説明(斎藤教諭)

本題材で扱う「Caro mio ben」の歌詞の内容は、まだ高校生にとっては理解することが難しいかもしれないが、興味をもてるものであると考える。楽曲の構成も分かりやすいため、難しさと楽しさとを両立とも味わいながら歌唱表現できるように指導していきたい。

1学期は歌唱の授業を行っており、日本語の歌詞の楽曲に応じた発声法などを指導した。それを基にして、外国語の歌詞の楽曲に触れた生徒が、どのようなところで学習の深まりを感じているのかを見て頂きたい。特に本時では、歌詞の内容と旋律の動きを歌唱表現につなげ、生徒の学びがより活発に、そして深まるように指導をしていきたい。


(2)研究協議
 研究授業を観る「研究協議の視点」として、3月に告示された次期学習指導要領を踏まえて次の4つを提案する。「見方・考え方」と「資質・能力の3つの柱」については参考資料にも目を通してほしい。研究授業後の授業研究では、各班で1~2つの視点を選んで協議を行ってほしい。

1.課題の質やレベルは、本時の目標を達成するために適切であったか

2.本時の展開は、主体的・対話的で深い学びになっていたか

3.生徒は、音楽の「見方・考え方」を働かせていたか

4.評価の計画は、「資質・能力の3つの柱」と関連していたか


〇班別協議の内容例

・各ペアでの話し合いがしっかり行われていた。

・歌詞の内容と旋律の動きの関わりに着目して、お互いが意見を出し合いながら考えていた。

・ペアで工夫した歌唱表現を、クラス全体で共有する時間があるとより学びが深まった。

・ただ発声するのではなく、「喜怒哀楽」の表現で発声することでその後の歌唱表現につながっていてよかった。

・旋律の動きとその特徴を捉えさせるために、他の曲(教員が作曲したもの)を比較させたのが分かりやすかった。

・ペアで考えた後、全員で歌う際に「表現は自由」という声掛けを行うと一人ひとりがより自由に伸び伸び歌えるかもしれない。

・本時の目標に合った導入が行われていた。

・話し合うための楽典的な知識が身に付いていた。

・歌唱表現をペアで考える際に、旋律重視、歌詞重視で分けて考えていたペアがあったので、違うペア同士での意見の共有があるとより深い表現が考えられた。

・歌う時に譜面台を使うと、歌う生徒は下を向かず、他の生徒はワークシートを見ることができるのでよいかもしれない。

・2人で机を1つ使うことによって、話しやすい雰囲気が生まれており、教員も間に入りやすく机間巡視がしっかり行われていた。

・比較するもう一つの旋律を教員自身でつくられていたことがよかった。

・旋律の動きを指でなぞったときに、リズムによってなぞり方が変化してしまっていたので、リズムをなくして音程だけに着目させると分かりやすかった。

・ペアごとの発表や振り返りの場があると、学びが深まった。

(3)指導・助言等
①島田 聡 先生(群馬県教育委員会高校教育課指導主事)

「喜怒哀楽」と関わらせた発声練習により、授業の導入から生徒が自然に笑顔になっていた。その後も、斎藤先生の声掛けに生徒は笑顔で反応していて、温かい雰囲気が授業の最後まで続いており、このような人間関係が授業においては重要だと感じた。また、音楽室に来ると笑顔になれるということが、精神面だけでなく技能面にもつながっており、笑顔で歌うことで、歌唱するために必要な表情筋を生徒は無意識に使えていたと考える。しかし、生徒が無意識であるからこそ、生徒同士で向かい合って発声した時、指導者が「よい笑顔で歌えている、これが発声の基本だ」などと価値付けし、意識化する必要もある。「喜怒哀楽」を表現する発声練習はとても効果的で、例えば「で悲しみを表現」するというのが、楽曲の歌詞の「Cessacrudel」につながると感じた。
 本時の展開では、斎藤教諭が生徒に示した本来の旋律とは異なる「Caro mio ben」の旋律の味わいを手掛かりにして、本来の旋律の音の動きと歌詞の感情とを関わらせる学習から始まった。そのために、手の動きで旋律の音の動きを表現するように指導していたが、楽譜から読み取ることに比べて、より音の動きが可視化され、実感的に理解しやすい手立てであったと感じた。二つの旋律の働きの違いをより明確に理解させるためには、例えば、ペアで同時にそれぞれの旋律を歌い合って手の動きを比較していくことで、歌詞の内容に対する旋律の動きの違いを感じ取れるのではないだろうか。

 二つの旋律を比較した後、斎藤教諭が示した旋律について「Caromio benの感じがない」と生徒とともに確認をしたことが、生徒が本時の学習課題を確かにもつことにつながった。学習指導案では、その部分が発問として囲みで示されており、本時の目標がここに集約されていると考える。この発問は、学習指導案に示されている目標よりも、生徒の実態に即して、旋律の動きと歌詞が表す感情との関連を学習の視点として分かりやすく表している。このように、生徒とともに学習課題を確認し、それが端的な言葉で確認することが大切であると感じた。
 授業の前半は、旋律の動きと歌詞の内容とを関わらせていたが、後半のペアの学習は強弱に焦点が当てられ、その土台となる旋律の動きと歌詞の内容との関連は、生徒の意識からやや薄れてしまったように感じた。そのためにも、生徒の発言を板書していくことが必要であったと考える。「Caro mio ben
」の本来の旋律と斎藤教諭が示した旋律の違いなどについて、生徒が感じ取ったことを板書で整理していくことで学びの過程が視覚化され、本時の前半と後半の学習をつなぐものとなり、強弱の工夫を考える上での重要な根拠となると考える。
 強弱の工夫を2パターン考える学習活動は、生徒にとって表現の可能性を広げるという点で非常に有効であった。生徒は、実際に歌いながら、まず自分の中で楽曲に最もふさわしいだろうという強弱の工夫を考える。その後、その工夫と逆の表現や全く異なる表現で歌ったり、それらを比べたりする中で、最初に考えた強弱の工夫によって、自分がイメージする「Caro mio ben」が表現できているか?について吟味する。他者の表現を聴いて自分の表現を追求するという学習でなくとも、自分の中に異なる考えを複数もつことで学びが深まるという、自己との対話的な学びである。強弱の工夫自体には唯一の正解はないため、このような活動を取り入れることで、旋律の動きや歌詞の内容をよりどころに音楽における表現の多様性に触れる学習となった。

 最後に、強弱を工夫する場面で生徒から「教科書と同じになってしまう」あるいは「逆になってしまう」という発言があった場合、指導者としてどんな答えを返すかを参加頂いている先生方全員にお考え頂きたい。生徒が自分の判断に確信をもちたいが、それが出来かねている時、何をどのように伝えるのかは、これからの教師にとって非常に重要である。答えは一つではなく、それぞれの場面や生徒との関係性によって様々であり、多様な表現を認め合う音楽という芸術であるからこそ、その指導者として用意しておきたいことであると感じる。

②上田 裕信 先生(群馬県高等学校教育研究会音楽部会副部会長)

発声練習の際の「喜怒哀楽」の表現の中で、「楽」の時に声を自然に出しやすいと感じている生徒が多い様子が見られ、普段から安心できる環境で授業を受けられているといことが伝わった。自己表現のために人は想いを言語化するが、それでも感情を伝えることは難しい。しかしその感情は、音楽に乗せて歌唱することで他者に伝えられるということを実感できる授業であった。芸術科の授業の単位が少ないことが危惧されているが、芸術科、特に音楽の授業での可能性を今後も示してほしい。

 

③清田 和泉 先生群馬県高等学校教育研究会音楽部会副部会長)

斎藤教諭と生徒との関係が大変良好で、とてもよい雰囲気の授業だった。生徒は笑顔で授業を受けており、本当に楽しんでいることが伝わった。

授業の中で「音が高くなるとテンションが上がる」や「音が低くなると悲しい感じになる」など、自然と音楽の知覚・感受と日常生活とを関わらせる言葉を生徒に投げかけていたことで、生徒のイメージする音楽の形と感情との関係がさらにインプットされると感じた。また、それに関連して思考・判断する場面が豊富でよかった。

本時はまだ4時間目ということで、実際の表現に結び付けるにはまだ早かった部分もあるが、これから思考・判断したことと表現とを一緒に深めていける指導を展開してもらいたい。

 

④大熊 信彦 先生群馬県高等学校教育研究会音楽部会副部会長)

歌詞の内容、旋律の音のつながり(音高やリズム)、強弱を関連付けて、歌唱表現を工夫する授業だった。特に、旋律と強弱が生み出す音楽の質感に生徒自身が向き合うという点で、音楽の授業の本質を感じた。音楽が醸し出している質感に生徒を向かわせるための工夫が授業の中にたくさんあった。

次期学習指導要領では、「感性を働かせて、音楽を自己のイメージや感情と関わらせる」ことが強調されている。また、知識や技能を土台とした思考力・判断力・表現力を基に、音楽を形づくっている要素を知覚し、それらの働きを感受しながら学びに向かう力を身に付けることが大事になる。音楽という教科の本質は、音楽が醸し出している質感の言語化を試みたり、友達と対話したりしながら、生徒が音楽の質的な世界を感じ取ることで心を豊かにしていくことである。そのことがよく行われている授業であった。

授業では、例えば、高い音に向かってクレッシェンドしていくのは歌いにくいが、それでも、そのように表現したいという必要性を感じて技能を高める過程が大切である。クレッシェンドと書いてあるから次第に強くした、ということでは何も伝わらず何を表現したいのかも分からないが、「ここはどうしてもクレッシェンドしたいので、それができるような技能を身に付けて歌いたい」という思いをもって歌った歌は、聴き手にもその思いが伝わり、自分の音楽を表現した価値のあるものになる。本日の授業はそれを実現するという意味で、とても示唆に富むものであった。

⑤清水 郁代 先生(群馬県高等学校教育研究会音楽部会長)

広い空間のあるよい環境の音楽室であるため、それを上手く活用することでさらに生徒の活動の幅も広がり、意見交流もより深いところまで触れられるものになったと感じた。生徒が楽しいと思えていたのは事実ではあるが、生徒の学びがどこにあったのかということも考えてほしい。

生徒は指導する先生をよく見ている。言葉遣いやイントネーション、表情まで一つ一つ注意をする必要がある。いつも笑顔で授業をするということは難しいが、音楽は「音が楽しい」と書くので、先生自身は個人的な感情は塞ぎ、生徒が先生を見た時に「頑張ろう」というエネルギーの源を与えられる存在であってほしい。

また班別協議も活発であり、今回のように班別協議で出された意見を用紙にまとめて印刷し、直接目を通すことで、出席された先生方の貴重な財産になる。その他、学習指導案は生みの苦しみがあるが、今回のように左右見開きの2つを比較して、どのように変化しているのかをもう一度確認することで、作成の大変さも共有しながら先生方の今後の授業づくりに役立ててもらいたい。

音楽の教員は1校に1人であることが多く、自分で授業を振り返って課題を見つけたり客観的に捉えたりすることが難しい。そのため、こうした授業研究会にこれからも積極的に参加し、他の先生の授業を見させてもらう中で自分の反省点を見出してもらいたい。

(4)参加者(敬称略)

清水 郁代(吉井)    清田 和泉(吾妻特支)  上田 裕信(太田東)  大熊 信彦(太田女子)

島田 (高校教育課) 塚田 孔右(太田工業)  兒玉 理紗(高崎女子) 勝山 英城(万場)

住谷 (前橋商業)  東  喜峰(県立前橋)  川上 寛子(玉村)   黒岩 伸枝(高崎)

松平 康子(尾瀬)    富岡 恵美(安中総合)  五十嵐桃子(長野原)  橋詰 詩織(太田女子)

藤嶋 啓子(関学附)   須田 諭美(吉井)    戸松 久実(吉井)   野口 瑞穂(大間々)

秋元 麻美(渋川青翠)  車﨑 優香(県立伊勢崎) 井上 春美(藤岡中央) 小川 唯佳(利根商業)

木部 (太田フレックス)伴野 和章(太田東)   引田 麻里(市立太田) 角田 幸枝(榛名)

斎藤真里奈(沼田女子)  坂本 (館林女子)

平成30年度第一回理事会

 平成30年6月1日(金)14:00~16:30に平成30年度第1回理事会が、吉井高校会議室にて開催されました。冒頭清水新会長から過日開催された高文連拡大理事会からの報告として、高校芸術祭は今年度をもって廃止となるため、平成31年度からは「群馬県高等学校芸術祭音楽部門団体演奏会」「群馬県高等学校芸術祭音楽部門個人演奏会」という名称が使えなくなるため、内容は今まで通りだが新名称については事務局に一任させてもらい、高文連や他の関係機関と調整しながら新事業名を決定したい旨の報告がありました。更に高校教育課の島田指導主事から、昨年まで高校芸術祭は県教委から高文連に委託事業費として60万円に加え、高文連から120万円の合計180万円で6部門で開催してきたが、今年度から県教委からの委託事業費が全額カットされた。しかし、すでにホールなどは一年前に高校芸術祭として予約してあることから、平成30年度は今まで通り高校芸術祭音楽部門として団体演奏会、個人演奏会として開催するが、平成31年度からは高校芸術祭ではなくなるため、新名称での開催となることの補足説明がありました。

続いて議事として諸事業の計画が協議され、7月11日(水)に開催される団体演奏会の講師に、木幡 亮仁氏(クラリネット)、猿谷友規氏(バリトン)が提案され承認されました。11月7日(水)に開催される個人演奏会の講師には複数の方が推薦され、今後係で交渉を行い決定して行くことになりました。授業研究会については6月22日(金)12:45~16:30に沼田女子高校の斉藤真里奈教諭による「イタリア歌曲の特性や旋律の美しさを感じ取って、歌唱表現を工夫しよう」という題材で研究授業が実施されることになりました。それ以降の授業研究会は期日は未定ですが、太田高等特別支援学校の北爪優香先生、玉村高校の川上寛子先生にお願いしてあることが報告されました。夏季研究会については開催日時について協議し、8月24日(金)に開催することになりました。日程、会場についてはこれから調整となりますが、内容は島田指導主事による新学習指導要領の解説、伝統音楽研修会参加者による実技研修、部会演奏会で取り上げる歌劇「みづち」についての楽曲研修等が予定されています。2月10日(日)に開催される部会演奏会の入場料は大人1,000円、高校生500円とし、チケットノルマは例年通りとすることが確認されました。高文連関係として10月20日(土)に開催される県高総文祭総合開会式は、次年度以降はベイシア文化ホールにて開催されることが報告されました。最後に連絡・報告として、ホームページの記事作成後の承認申請の流れと、文書等の決裁・発出等についての説明がありました。

平成30年度定期総会

平成30年度群馬県高等学校教育研究会音楽部会定期総会が、5月2日(水)14:00~16:30に昌賢学園まえばしホール(前橋市民文化会館)第1・2会議室で開催されました。


当日は県教育委員会高校教育課島田指導主事にも出席していただき、前商の住谷先生と下仁田の大谷先生が議長に選ばれた後、予定された議事は全て承認されました。平成30年度事業については、事業計画のページを参照してください。なお、規約改正により、音楽部会会則の「第4章 会員 第5条 本部会の会員は県下の高等学校音楽関係者及び本部会の趣旨に賛同する有志で組織する。」の下線部分を削除し、「本部会の会員は県下の高等学校音楽関係者で組織する。」に改正されました。
平成30年度の事業計画については、メニューから事業計画のページを参照してください。