事業報告
第20回音楽部会演奏会 歌劇「みづち」
出演者全員の記念写真
今回の公演では押黒族に捕らえられたみづちを小太郎が救出するという脚本の丹治富美子先生の構成はそのままに、日照りに苦しみ天に祈る人たちや、弟の無事を願いながら送り出そうと葛藤する姉や、小太郎のために黒髪を切り落としてまでも共に戦おうとする夕月姫の心情などを、繊細な和音を用いて表現した白樫栄子先生の音楽に焦点を当てて公演に臨みました。
昨年八月に開催された夏季研究会では、作曲の白樫栄子先生を講師にお招きして、作曲家の観点からの解釈と音楽表現についての講習をしていただきました。そのため、特に第三幕の最後の合唱が今までの公演とは異なり、歌劇のクライマックス(コーダ)としての高揚感を押さえ、豊かで深い感謝に溢れた祈りの音楽(コラール)として演奏されました。今回の公演でも脚本の丹治富美子先生と作曲の白樫栄子先生にお越しいただいていたため、舞台上でご紹介させていただきました。
みづちが救出され、村に豊かな実りと平和が戻ってきたことへの感謝の合唱の場面では、客席のあちこちで涙を拭う人たちの姿が見られました。特に練習会場として大変お世話になった高崎高等特別支援学校の生徒さんを多数お招きしましたが、彼ら彼女らの頬を伝わる涙には本当に心動かされました。
小太郎の恋人の夕月姫を演ずる田中ちひろ先生(高高特)と、小太郎を演ずる塚田孔右先生(太田工)
(右から)みづちを救出する方法を授ける黒姫を演ずる大小原美幸先生(高高特)、黒姫の供人で鳥の化身として小太郎の道案内をしてきた小川唯佳先生(利根商)、兒玉理紗先生(高女)、斎藤真里奈先生(沼女)
指揮・演出の朝倉康雄先生(前橋西)と、合唱の出演者
雨乞いの祭りの中で踊る村人たちを演ずる合唱メンバー
出演者、伴奏・打楽器、音響・照明、受付、役員総勢46名での記念写真
事業報告
講演会
はじめに、研究授業や授業研究会を教師にとって有意義な学びの場とするための視点について触れたい。当然のことではあるが、研究授業において授業を行う教師は授業について勉強をし、それを糧に今後必ず伸びていくが、授業を行った教師だけの授業研究会にしてしまってはもったいない。例えば授業参観で、保護者は自分の子供を注意深く見ていることだろう。自分の子供の1時間の姿を見るのである。研究授業では、そのクラスに思い入れのある生徒はそこまでいないのが普通であるので、そこに参観する人たちはそのクラスの中で知っている人、つまりその指導者である教師に注目する傾向がある。しかし本来見るべきなのは生徒であり、生徒の姿を見たからこそ授業研究会で発言できることが増える。生徒の状況を見ることで、自分が普段授業を行っている時には行うことのできない生徒の見方をしてほしい。授業研究会においては、授業のねらいに基づいた内容が語られること、生徒の具体的姿が語られること、そして生徒の姿と教師の指導との関係が語られることが大切であり、「私だったらこうする」という代案の意見が出ることも必要である。
現行の学習指導要領での成果と課題は中教審の答申で次のように示されている。
成果については日頃先生方が取り組んでこられ、充実してきていることであり、子供たちの様子を見ながら判断されている。先生方の努力の結果である。一方で、課題として挙げられていることは次のようなものであるが、その内容を見てみると今までも当然努力されているが、さらに充実するとよいとされていることである。
現行の学習指導要領の要点としては、次のようなものが挙げられている。その中で注目したいことは、学習の「過程」を重視したという点である。音楽では当然最終的な結果も大切であり、そこに責任をもつ必要があるが、それと同時に一連の過程にも注目してほしいということである。最終的な結果に至るまで、指導者が生徒を引き上げていったのか、生徒と指導者とのやりとりや話合いがあったのかによって、ゴールに辿り着いた時の生徒の達成度が違う。スタートとゴールは一緒だが、指導者が導いていくことは何なのか、生徒に考えさせることは何なのか、その過程を授業づくりの中で大切にしてほしい。
「音楽への関心・意欲・態度」「音楽表現の創意工夫」「音楽表現の技能」「鑑賞の能力」の4つの学力を伸ばしていくことにより、その上位の3つの学力である「基礎的な知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」も身に付くことになることになる。それぞれの学力が様々に関連している。
さらに、学年間・校種間の連続性や系統性を踏まえた授業実践について、指導事項の連続性や系統性を考えてほしい。学習指導要領は、学年が上がるにつれて質的、学力的に増えていくように記述されているが、高等学校の先生方は小・中学校の学習指導要領を確認してほしい。小学校の学習指導要領の目標に示されている児童の姿が、高校生で見られたとしても素晴らしいと思える。それは高等学校の学習指導要領の目標の中に、小学校や中学校の学習指導要領の目標も含まれているからである。授業が上手くいかないと感じた時など、高等学校以外の校種の学習指導要領などを参考にすると授業づくりのヒントとなる。目標の系統性や連続性は学習の過程に似ており、今の目の前の生徒と学習指導要領を対応させるという観点でも大切である。
新学習指導要領でも小・中・高等学校の連続性や方向性は出されており、その中でも「子供を主語とした授業観」に注目したい。
中教審の答申に示されているこれらのことは、全て「子供」が主語である。子供の視点で授業を見直してほしい。他の研修で音楽以外の先生方に対して、学校の音楽の授業で身に付いた「音楽の力(学力)」について尋ねたことがある。残念ながら多くの先生方がすぐには思い浮かばなかったり、答えられなかったりした。ようやく出てきた答えも、リコーダーの運指であったり忍耐力であったり、今でも役に立っている力としてはあまり例が挙がらなかった。これは極端なものではあるが、芸術科(音楽)は本来このような力をつけるための教科ではない。
それは、授業が「教師」を主語にしてしまっているからである。「子供」を主語として「音楽の力(学力)」を尋ねた場合の答えはこうではないはずであり、少なくとも避けたいものである。「教師」が主語であると、教師がどのように教えるかを考えて授業で教える。「子供」が主語であれば、先に子供が何をどのように学ぶのかを考え、指導方法を考えることになる。子供の視点が次第に切り離れていくと、授業の考え方が方法論的、都合主義的になっていく。子供の視点が全くなくなってしまうと、授業が上手くいかないことを子供のせいにしてしまうこともある。子供を主語として考えていこうとした授業の捉え方が「アクティブ・ラーニング」の背景であり、そうした視点を今後意識してほしい。
音楽科教育の構造について、現行の学習指導要領では音楽表現の創意工夫と音楽表現の技能を合わせて「表現の能力」と表されることもある。それに音楽への関心・意欲・態度と鑑賞の能力を合わせて、4つが評価規準として示されている。今後は表現や鑑賞といった領域ごとではなく、全ての活動の中でそれらが分けられることとなる。
教科の目標についても、現行の学習指導要領では、表現や鑑賞など音楽活動に関わる形で示されていたが、新学習指導要領では中教審の答申を踏まえ、(1)知識及び技能、(2)思考力・判断力・表現力等、(3)学びに向かう力、人間性等」の三つの柱で整理された。それに関連して、「アクティブ・ラーニング」という言葉の代わりに、「主体的・対話的で深い学び」という文言が中教審の答申でも使われてきているが、その趣旨を理解して授業改善を図ることに繋げたい。
「主体的・対話的で深い学び」は、元は「主体的」「対話的」「深い」学びというそれぞれ3つの言葉が組み合わさったものであり、関係性は対等である。前者2つが活動レベルで「深い学び」に向かうものという意識ではなく、この3つの学びそれぞれができるようにすることが大切である。「アクティブ・ラーニング」ということに関して触れれば、指導者がアクティブ・ラーナーになっているかどうかという視点が必要である。授業で生徒がグループ活動や討論を行ったかどうかではなく、教職のプロとして指導者がアクティブ・ラーナーとなることが求められる。「型」にとらわれて授業することはむしろ「アクティブ・ラーニング」の対極であり、子供の視点が消えることでもある。
「主体的な学び」とは、生徒自らが学びの見通しをもち、学びを振り返り、次の学びに繋げるといことである。それは学びのレベルの見通しであって、この授業で何を行うかといった活動レベルの見通しではない。「対話的な学び」とは、他者との対話などにより、自分の考えを広げたり深めたりすることである。「深い学び」とは、「音楽的な見方・考え方」を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見出して解決策を考えたりするような学びである。深い学びにおいて、様々な活動や内容の例が示されているのは、教科の特性や本質に関わる学びであるからである。「深い学び」は教科の本質に迫り、向かっていくような学びということでもある。
中教審の答申で示されている「音楽的な見方・考え方」の説明の中の「音楽を形づくっている要素とその働きの視点で捉え」とは、そこにある音や音楽その音響そのものに目を向けるということであり、「自己のイメージや感情、生活や社会、伝統や文化などと関連付けること」とは、イメージや感情と結び付けて人間にとって意味のあるものにすることであり、それらに関わらせて考えるとその音楽の意味が分かる。それが深い学びへと繋がり、芸術科(音楽)の教科の本質に迫ることになる。「見方・考え方」を授業の中で繰り返し触れ、考えられるようにすると子供たちが成長していく。子供たちが将来、生活や社会の中の音や音楽、音楽文化と豊かに関わることを助けることに繋がっていくのである。そうしたことを意識しながら子供たちと関わっていってほしい。参加者(敬称略・順不同)
廣澤 秀伸(前橋西) 上田 裕信(太田東) 大熊 信彦(太田女子) 荻野 葉子(大間々)
清水 郁代(二葉特) 臼井 学(文部科学省) 島田 聡(高校教育課) 朝倉 康雄(前橋西)
柳田絵美子(館林高特) 金田 知子(富岡東) 黒岩 伸枝(高崎) 根岸 玲恵(西邑楽)
大小原美幸(高高特) 前島 律子(あさひ特) 五十嵐桃子(長野原) 戸松 久美(吉井)
中畑 香映(太田女子) 森田 尚子(前橋東) 富岡 恵美(安中総合) 内林 美里(伊勢崎特)
松平 康子(尾瀬) 中澤 玲子(高崎北) 井上 春美(藤岡中央) 饗庭 麻里(市立太田)
鈴木香奈子(桐生南) 野口 瑞穂(大間々) 伴野 和章(太田東) 小川 唯佳(利根商業)
斎藤真里奈(沼田女子) 武井 康博(伊勢崎商業) 藤嶋 啓子(関学附) 勝山 英城(万場)
小川 良介(四ツ葉) 角田 幸枝(榛名) 東 喜峰(県立前橋) 青柳 亮(桐生女子)
目崎ちひろ(高高特) 伊藤 範秋(北海道・別海) 坂本 将(館林女子)
第3回授業研究会
(1)授業説明(鈴木教諭)
今回の授業で取り上げるベートーヴェン作曲の交響曲第9番、通称「第9」は非常に有名な曲であり、生徒もどこかで耳にしたことがあるだけではなく、平和や統一の象徴といった様々な文化的・歴史的背景が基になっているものである。音楽を形づくっている要素に着目しながら、ベートーヴェンがどのような思いやメッセージを伝えたかったのかを考えられるようにしたい。生徒の授業への取り組みは素直で真面目ではあるが、自分の意見の根拠を見つけないと自信をもって発言できない生徒も多い。指示をされたことはできるが、自分で考えながら自由に取り組む場面では、消極的になってしまう生徒もいる。本題材で扱うワークシートは4枚あり、本時では前時で記述した2枚目を基にしてエキスパート活動で3枚目を記述できるようにする。ジグソー法では、1人ではなかなか解決が難しい課題に対してエキスパートを養成し、そのエキスパートが調べたことや考えたことを組み合わせていくことで課題の解決を図るものである。本時は3時間目の授業であるが、前時の2時間目で既にエキスパート活動を行っている。第1~3楽章の主題の一部が第4楽章の冒頭に演奏されることに気付けるようにするために行った活動である。本時では、生徒それぞれがエキスパートとなって分かったことを各グループで発表し、その上で第4楽章の冒頭を鑑賞し、作曲者のどのような思いが込められているのかを考えられるようにしたい。本題材の最初の時間に作曲者からのメッセージを考えた時よりも、学習を通して生徒の考えがより深まるようにしていきたい。
(2)研究協議
研究授業を観る「研究協議の視点」を研究係が提示し、各グループで1~2つの視点を選びながら協議をする。
「研究協議の視点」〇本時の目標は達成できていたか
〇課題の質やレベルは適切であったか
〇評価の計画は適切であったか
〇主体的・対話的で深い学びになっていたか
・ジグソー法が新しい手法で、指導する側も面白いと感じた。鑑賞領域だけでなく表現領域まで含めて様々な学習に生かせそうだと感じた。
・授業準備が素晴らしかった。ワークシートやスライドに楽譜があり、それらを見ながら聴くことができたのがとてもよかった。ICTの資料についても、今後も継続的に使っていけるものだと感じた。鈴木先生の準備と思いにより、生徒の主体的・対話的で深い学びが生まれていた。
・ステップを踏んだワークシートが分かりやすく、他の楽章と同じ作りになっているので理解しやすい。
・
・ジグソー法は思い返せば昔からやっていた手法であると感じたが、楽章ごとに部屋を分けて鑑賞し、グループワークをさせてエキスパートをつくるなど、今回はその内容が非常によかった。
・音源の準備が充分なされ、聴かせたい部分だけをまとめて聴かせるのは思いきりがよく、スピード感もある。
・今回の教材については4楽章のみに焦点を当てがちではあるが、1~3楽章を聴くことで4楽章がより深まる。時間はかかるかもしれないが、ここまで深くできて素晴らしいと思う。また、授業者が細かくワークシートをチェックすることで生徒が自信をもって発表することができていた。
(3)指導・助言等 臼井 学 先生
音楽は鑑賞すればするほどその捉え方は変わっていき、学習が深まっていく。予めその音楽について知っている知識があったとしても、新たに気が付き、発見できることがある。それが音楽の聴き方の面白さである。鑑賞する音楽は変わらないが、聴いて受け取る側が変わっていき、そうして変わっていく自分が自覚できるメタ認知の経験の積み重ねが、音楽の学び方である。学習指導案には本時の授業の発問において、作曲者である「ベートーヴェン」を主語として記述されているが、授業者の意図としてはそれを「あなた」という生徒自身を主語に置き換えているということが伝わってくるものであった。鑑賞で感想等をまとめる活動では、例えば音楽を鑑賞しなかったとしても、作曲者の背景や音楽の構成などこれまで授業の中で指導された文字による情報で知り得た知識で記述できてしまうこともある。そうした知識を知った上で、生徒自身である「あなた」の聴き方はどのように変わったのかを考えられるようにしなければ、その音楽を他人事のように聴いてしまうことになる。作曲者「ベートーヴェン」からのメッセージだけではなく、それを受け取った結果として「あなた」はどのように考えるのかを最後に記述するというように、主語をそれぞれの学習場面に応じて選びながら発問していくということも大切である。授業展開においては、生徒が自分の鑑賞した楽章を1分ずつ他の生徒に説明するという場面でジグソー法が使われていたが、それを含めて後にその楽章を全体で鑑賞する場面までをジグソー法を取り入れた学習と考えるとよい。最後に生徒が記述した意見を見ると、「歓喜」というものの質が変わっていくことが分かり、そこがこの授業の素晴らしい点である。冒頭でも述べたが、作曲者の背景などの情報を詳しく伝え過ぎてしまうと、そのことを基に感想を記述してしまう生徒や、それだけで終わってしまう生徒もいる。鑑賞した結果「あなた」はどのように考えるのかということを生徒が意識できるようにしてほしい。
群馬県高等学校芸術祭音楽部門個人演奏会
参加者(敬称略・順不同)
島田 聡(県教委) 廣澤秀伸(前西) 大熊信彦(太女) 松村正史(桐特) 清水郁代(二葉特)
鈴木香奈子(桐南) 朝倉康雄(前西) 根岸玲恵(西邑楽) 牧野 勇(前橋東) 饗庭麻里(市立太田) 金田英樹(前女) 兒玉理紗(高女) 中澤玲子(高北) 中畑香映(太女) 江原美帆(市立前橋) 坂本 将(館女) 斎藤真里奈(沼女) 須永瑛美(新島学園) 橋詰詩織(高経附) 柿沼晴吾(前橋育英) 伴野和章(太東) 諏訪悠太(太田フレックス) 青栁 亮(桐女) 野口瑞穂(大間々) 川上寛子(玉村) 荒木奈都子(渋女) 戸松久美(吉井) 住谷 伴(前商) 武井康博(伊商) 立嶋紀理子(西邑楽) 林 剛嗣(西邑楽) 須田諭美(吉井) 森村恭一郎(個人会員) 諏訪 幸夫(個人会員)
群馬県高等学校芸術祭音楽部門個人演奏会プログラム1
平成29年度群馬県高等学校芸術祭音楽部門個人演奏会(第41回県民芸術祭参加)
日時 平成29年11月8日(水) 10:00~
会場 昌賢学園まえばしホール(小ホール)
主催 群馬県高等学校文化連盟・群馬県高等学校教育研究会音楽部会
1 内容(プログラム)
○ ピアノ部門
1 太田 葉月(群馬県立高崎女子高等学校)
ワルツ 第2番「華麗なる円舞曲」 作曲 F.ショパン
2 村山 友萌(伊勢崎市立四ツ葉学園中等教育学校)
ピアノソナタ 4番 Op.7より 第1楽章 作曲 L.V.ベートーヴェン
3 中村 亮太(群馬県立太田東高等学校)
「熟練への手引き 作品299」より 第5番 作曲 C.ツェルニー
ピアノソナタ 第6番 ニ長調 KV284より 第1楽章 作曲 W.A.モーツァルト
4 中曽根 豪(群馬県立高崎北高等学校)
ピアノソナタ 第23番 ヘ短調 作品57 第1楽章 作曲 L.V.ベートーヴェン
5 工藤 新菜(新島学園高等学校)
エチュード ヘ短調 Op.10-9 作曲 F.ショパン
「60の練習曲」より 第10番 ハ長調 クラマー=ビューロー
6 小野 那津紀(群馬県立前橋東高等学校)
ピアノソナタ 5番より 第1楽章 作曲 L.V.ベートーヴェン
7 池谷 晴乃(群馬県立伊勢崎高等学校)
ピアノソナタ 第6番 ヘ長調 作品10-2 第1楽章 作曲 L.V.ベートーヴェン
8 松木 菜々美(前橋市立前橋高等学校)
ピアノソナタ 第2番 ト短調第1楽章 作曲 R.シューマン
9 今泉 優佳子(群馬県立高崎女子高等学校)
ピアノソナタ 第17番 ニ短調 作品31-2 第3楽章 作曲 L.V.ベートーヴェン
10 荻野 真妃(群馬県立太田女子高等学校)
エチュード 変イ長調 Op.25-1 作曲 F.ショパン
11 齋藤 杏優(群馬県立太田女子高等学校)
練習曲 第8番 ヘ長調 作品10 作曲 F.ショパン
12 町田 乃愛(群馬県立高崎女子高等学校)
40番練習曲 第15番 作曲 C.ツェルニー
13 小菅 美穂(群馬県立渋川女子高等学校)
ピアノソナタ第26番 変ホ長調 作品81「告別」第1楽章 作曲 L.V.ベートーヴェン
14 岩崎 葵(高崎市立高崎経済大学附属高等学校)
シンフォニア 第12番 イ長調 BWV.798 作曲 J.S.バッハ
15 和田 妃亜蘭(前橋育英高等学校)
ピアノソナタ Op.27-2「月光」 第3楽章 作曲 L.V.ベートーヴェン
16 松本 瞬(太田市立太田高等学校)
平均律クラヴィア曲集 第1巻 第21番 変ロ長調 BWV.866 作曲 J.S.バッハ
12の練習曲 Op.25 第12番 ハ短調 「大洋」 作曲 F.ショパン
17 山田 香菜枝(群馬県立太田女子高等学校)
20の小練習曲 第10番 ト短調 作曲 M.モシュコフスキー
18 阿部 和奏(太田市立太田高等学校)
ピアノソナタ ホ短調 Hob.16:34 作曲 F.J.ハイドン
○ 器楽部門
1 フルート独奏
新井 萌花(群馬県立高崎女子高等学校)
イマージュ 作曲 E.ボザ
2 ホルン独奏
藤塚 夏美(群馬県立沼田女子高等学校) ピアノ 斎藤 真里奈
ホルン協奏曲 第3番 第1楽章 作曲 W.A.モーツァルト
3 クラリネット独奏
矢島 野乃花(伊勢崎市立四ツ葉学園中等教育学校)
32のエチュードより 7番 10番 作曲 C.ローズ
4 ユーフォニアム独奏 ピアノ 川上 寛子
織茂 黎奈(群馬県立玉村高等学校)
パナシェ 作曲 R.デューハースト
5 トランペット独奏
小平 結菜(群馬県立館林女子高等学校) ピアノ 福地 美好
華麗なる幻想曲 作曲 J.B.アーバン
6 ヴァイオリン独奏
須藤 はるな(新島学園高等学校) ピアノ 須藤 咲弥
スペイン交響曲 作曲 E.ラロ
7 トランペット独奏
原 千畝(群馬県立吉井高等学校) ピアノ 戸松 久実
「輝く雪の歌」による変奏曲 作曲 J.B.アーバン
8 フルート独奏
小金澤 萌花(群馬県立太田女子高等学校)
フルートのための35の練習曲 第1巻より6番 作曲 E.ケーラー
9 クラリネット独奏
東海林 梨紗(群馬県立西邑楽高等学校)
クラリネットのための32の練習曲より 19番 20番 作曲 C.ローズ
10 ヴィオラ独奏
宮川 清一郎(高崎市立高崎経済大学附属高等学校)
無伴奏チェロ組曲 第3番 ハ長調 BWV.1009より プレリュード 作曲 J.S.バッハ
無伴奏組曲第2番D-dur Op.131dより 第2曲 Andante 作曲 M.レーガー
11 フルート独奏
栁澤 小春(群馬県立高崎女子高等学校) ピアノ 太田 葉月
フルート協奏曲 ト長調 KV313 作曲 W.A.モーツァルト
○ 器楽アンサンブル部門
1 木管三重奏(群馬県立前橋商業高等学校)
有賀 菜音 森田 夏実 茂木 すみれ
ディヴェルティメント 作曲 M.アーノルド
2 ジャズコンボ(群馬県立太田フレックス高等学校)
高坂・チーマ・マックスウェル 高田 瑞樹 小野寺 蒔 澁谷 美聖
故郷の空in Swing スコットランド民謡
群馬県高等学校芸術祭音楽部門個人演奏会プログラム2
○ 声楽部門
1 中村 亮太(群馬県立太田東高等学校) ピアノ 伴野 和章
あなたへの愛を捨てることは 作詞 不詳
作曲 F.ガスパリーニ
2 須藤 萌(群馬県立館林女子高等学校) ピアノ 坂本 将
歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」より「エウリディーチェを失って」 作詞 R.カルツァビージ
作曲 C.V.グルック
3 中里 さくら(群馬県立伊勢崎高等学校) ピアノ 野崎 さゆみ
私を泣かせてください 作詞 G.F.ヘンデル
作曲 G.F.ヘンデル
4 石橋怜奈(群馬県立太田女子高等学校) ピアノ 小暮 牧子
平城山 作詞 北見 志保子
作曲 平井 康三郎
5 佐藤 花音(群馬県立前橋女子高等学校) ピアノ 金田 英樹
かやの木山の 作詞 北原 白秋
作曲 山田 耕筰
永遠の愛と誠 作曲 G.ドニゼッティ
6 安藤 仁美(群馬県立渋川女子高等学校) ピアノ 小菅 美穂
あなたへの愛を捨てることは 作詞 不詳
作曲 F.ガスパリーニ
7 山田 侑美(群馬県立太田女子高等学校) ピアノ 沢辺 理緒
風の子供 作詞 竹久 夢二
作曲 中田 喜直
8 ルウ チュン クオン(群馬県立玉村高等学校) ピアノ 川上 寛子
You Raise Me Up 作詞 B.グレアム
作曲 R.ラヴランド
9 小林 みのり(群馬県立西邑楽高等学校) ピアノ 根岸 玲恵
かやの木山の 作詞 北原 白秋
作曲 山田 耕筰
恋とはどんなものかしら 作曲 W.A.モーツァルト
10 田中 実春(前橋育英高等学校) ピアノ 和田 妃亜蘭
あなたへの愛を捨てることは 作詞 不詳
作曲 F.ガスパリーニ
陽はすでにガンジス川から 作曲 A.スカルラッティ
11 中尾 梓(高崎健康福祉大学高崎高等学校) ピアノ 小杉 泰斗
ああ私の優しい情熱が 作曲 C.V.グルック
母 作詞 竹久 夢二
作曲 小松 耕輔
12 阿部 和奏(太田市立太田高等学校) ピアノ 松本 瞬
あなたへの愛を捨てることは 作詞 不詳
作曲 F.ガスパリーニ
13 齊木 真央(群馬県立高崎女子高等学校) ピアノ 太田 葉月
あなたへの愛を捨てることは 作詞 不詳
作曲 F.ガスパリーニ
○ 声楽アンサンブル部門
1 二重唱(群馬県立大間々高等学校) ピアノ 野口 瑞穂
井出 麻裕 井出 望裕
童神 作詞 古謝 美佐子
作曲 佐原 一哉
オペラ「ホフマン物語」より『舟歌』 作曲 J.オッフェンバック
~講師プロフィール~
小松久美 (ピアノ) *
京都市立芸術大学音楽学部ピアノ科卒業。 在学中よりピアノを下村和子、田隅靖子、 チェンバロを有賀のゆり、室内楽、伴奏法をヘリー・ビンダーの各氏に師事。群馬交響楽団に客演として参加。1986年ジョイントリサイタル開催。2008年よりElm歌曲研究会ならびにElmサクラチャントにおいて芸術歌曲や教会音楽の独唱、合唱の伴奏者として活動。ピアノアンサンブルdouxのメンバーとして、2012年、2016年コンサート(東京)参加、2013年「ピーターとおおかみ」(高崎)開催。高崎芸術短期大学非常勤講師を経て後進の指導にあたる一方、ピアノデュオを始めとする様々な形態でのピアノ演奏、室内楽、伴奏など、幅広い演奏活動を行っている。現在、Elm(エルム)歌曲研究会役員、演奏家(ピアノ)会員。
小池静香 (メゾソプラノ)*
群馬大学教育学部音楽専攻卒業。声楽を福田和子、大沢精一、故渡辺恭夫、深澤節子、古澤泉、マリー・フランソワーズ・ロシニョール、スーザン・デニス、ワルター・モア、伊藤眞由美、木島千夏の各氏に師事。フランス詩のディクションと解釈をモーリス・ジャケ、ナディーン・バタグリア、ホロン・ユエットの各氏に師事。フランス歌曲を学ぶ為1989年、90年、95年渡仏。第10回ぐんま新人演奏会出演。1992年全日本演奏家協会フランス音楽コンクール入選。1993年日本クラシック音楽コンクール全国大会特別賞受賞。教会音楽、フランス歌曲、日本歌曲、バロック声楽を主として演奏活動を行う。2003年、10年リサイタルを開催。Elm歌曲研究会会長。演奏会、講習会の企画や子供向け音楽企画の脚本執筆、生涯学習音楽講座の講師も行っている。現在、Elm(エルム)歌曲研究会会長。群馬県立西邑楽高校音楽コース声楽専任講師。
講師演奏曲目
ピアノ独奏
1 「フランス組曲第5番」より アルマンド ト長調 J.S.バッハ
2 「子供の領分」 より グラドゥス・アド・パルナッスム博士 C.ドビュッシー
メゾソプラノ独唱
1 ひと時の音楽 H.パーセル
2 クロリスに R.アーン
3 旅への誘い H.デュパルク
夏季研究会
平成29年8月23日(水)に、群馬県総合教育センター音楽実習室を会場として夏季研究会が開催されました。午前中は群馬県教育委員会高校教育課指導主事 島田 聡 先生による講義「学びの質を変える「学習評価の工夫改善」について」と、群馬県教育委員会特別支援教育課指導係長 高橋 玲 先生による講義「特別支援教育の状況」をいただきました。
講義1 「学びの質を変える「学習評価の工夫改善」について」(群馬県教育委員会高校教育課指導主事 島田 聡 先生)※抜粋
1 学習評価の現状
「指導と評価の一体化」という言葉は良く耳にするが、例えば今日のように音楽の先生方が複数集まった時に、授業における指導については情報交換をするが、評価についてはなかなか触れないのではないだろうか。授業については改善したいことを話し合うが、評価についてまで話題にならないことが多い。「これでよいのか?」と疑問をもっていても、なかなか改善策を考えたり、実際に行動には移せなかったりすることもあるのではないか。
2 評価の対象と方法
(1)評価の対象
評価方法については、「各教科・科目の学習活動の特質」「評価の観点や評価規準」「評価の場面や生徒の発達の段階に応じて」観察、生徒との対話、ノート、ワークシート、学習カード、作品(演奏)、レポート、ペーパーテストなどの様々な評価方法の中から、その場面における生徒の学習状況を的確に評価できる方法を選択していくことが必要である。例えば、演奏したのにワークシートの記述のみの評価とはならないように、きちんと組み合わせていくことが大切である。
評価を適切に行うためには、できるだけ多様な評価を行い、多くの情報を得ることが重要である。生徒の学びが質的に向上していく姿が見えるようにすることが望ましい。そのためには、評価の内容や方法を吟味していくことが必要である。
ペーパーテストは、評価方法の一つとして有効であるが、目標に準拠した評価における学習状況の全てを表すものではない。音楽の授業を行ってきたのに、ペーパーテストだけの評価ということはない。生徒の資質や能力を多面的に把握できるように工夫することを意識してほしい。
(2)評価の方法
評価の方法はいくつかあり、例えば演奏など表現の領域で活用されるパフォーマンス評価や、達成したレベルをS~C(例 S:期待以上、質問・発問できる A:充分満足、質問できる B:関心をもっている C関心がない)などの段階で示すルーブリック、筆記の割合が高いポートフォリオ評価などがある。
先生方が評価について難しさを感じる理由は、特に表現領域の学習を進めていった時に必ず行われるであろう演奏・発表で音楽表現の技能を見取るパフォーマンス評価が、評価の中でも複雑なものだからである。このパフォーマンス評価については、中教審答申でも「多様な活動に取り組ませるパフォーマンス評価などを取り入れ、ペーパーテストの結果にとどまらない、多面的・多角的な評価を行っていくことが必要」とされている。今回の講義では、ルーブリックについて扱う。ルーブリックとは、子どもの学習到達状況を評価するための、評価基準表のことであり、縦軸に複数の評価項目を置き、横軸にはその到達レベルをS・A・B・Cの4段階で定義する。子どもの学びが各評価項目のどのレベルまで到達しているかを測ることで、ブレのない、客観的な評価が実現可能となる。何となく評価を行うのではなく、しっかりと表にしたり明文化したりしていくことによって生徒から信頼される、質の高い授業になる。
3 今後の学習評価
参考資料にもあるように、これまでの評価の4観点が、今後「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に取り組む態度」という3観点に整理される。そうした中でも、観点別評価をこれからも課題としてほしい。音楽の教科については意識してされていることが多いとは思うが、他教科は充分とは言えない状況もあるのではないだろうか。そうした教科のバックアップを音楽の教科で行っていくということも考えてほしい。観点別評価をしているということを周りに発信していくことで、学校の中での音楽の教科の役割について、これまで以上に重要視されるよう、向上を図っていってもらいたい。評価を見直すことで授業改善や質の向上にも繋がる。
講義2 「特別支援教育の状況」(群馬県教育委員会特別支援教育課指導係長 高橋 玲 先生)※抜粋
1 本県における特別支援教育の現状と課題
群馬県では、「群馬県特別支援教育総合推進事業」を行っている。その中で、「小・中学校、高等学校に関する事業」、「小・中学校、高等学校等サポート」として「個別の指導計画」や3~5年間を見通した「個別の教育支援計画」を作成することが規定されている。「個別の教育支援計画」の方が、作成される割合は低い。平成30年度から普通高校に通級学級ができるように計画されている。個別の指導計画の活用と、分かりやすく個に配慮した授業づくりが課題である。
交流及び共同学習について、その本当の目的は共生社会を実現するための事業である。国籍や障害を乗り越えて、皆が一緒に働くという意識をもてるようにすることが背景にある。お互いに認め合って、一緒に学習していくことを目指している。それは、世界人権条約に署名したところから始まる。その人たちにはその人たちの居場所、仕事があるという前提があったが、法律が整備されて、特別な支援が必要な児童・生徒もどこの学校にもいけるようになった。現在では、「この要件に当てはまる生徒以外は特別支援学校には入れません」というように、これまでとは入学の条件が逆になった。
関係機関との連携については、学校に入学前に、その児童・生徒が特別支援学校か、あるいは小・中学校か、どちらで学ぶことが適当であるか、県教育委員会と相談して判断する仕組みがある。保護者との連携を通して理解を促し、情報を共有しながらこうした事業の普及に取り組んでいる。
15~34歳のうち、若年無業者(ニート)として56万人が働けていないというデータがある。ニートの人数は毎年変わらない。学校は、決して子どもたちを2次障害に追いやってはならない。不登校の生徒は高校では減っている。中学校では増えているので、そうした生徒が高校に進学しなくなったということに関係があるのかもしれない。不登校のきっかけとしては、高校では本人に係る状況が主に原因として挙がっているが、元々は小学校では家庭に、中学校では学校に係る状況に原因があることが資料から分かる。高校での現状だけを見るのではなく、過去の小・中学校での生活の背景を見ることも大切である。
問題が起こった時の、生徒のいっぱいになってしまった心に、聴く余裕をまずは作ることから、生徒への対応が始まる。最初に共感的に話を聴き、最後に教員としての立場を踏まえた指導をすることが肝要である。現状では中途退学者は減っており、普通高校の問題も少なくなっているようにも思える。しかし普通高校の中にも、発達障害の可能性のある生徒は2.2%いることも分かっている。
2 発達障害の正しい理解
「自閉症スペクトラム障害」「注意欠如多動症」「学習障害」などの言葉が先行して話題になっているが、レッテル張りとならないように注意する必要がある。スペクトラムの基準も作られたが、その中間がいるということも知られるようになり、最近ではそうした基準に当てはめることは少なくなってきた。10人に一人程度、そうした傾向のある子どもがいる。
達障害は脳の機能障害であり、本人の努力不足でないことはもちろん子育ての失敗でもない。障害をもっている人たちの数が増えれば、今普通であると思われている人たちの方がマイノリティになる可能性もある。脳の機能、構造の問題であるので、適切な支援をすると状態が良くなり、またその反対にもあり得る。脳の障害として、感覚の問題をもっている人もいる。音楽の教科での最大の障害の問題である。高校の選択音楽なら良いが、それでも空間把握が苦手な生徒は美術ではなく音楽を履修する。つまり音楽を履修している生徒は、脳の機能として何も問題がないか、全くダメかの両極端であり、中間がいないということでもある。授業の中でいらないノイズをいかに落として、伝えたい内容を適切に伝えられるかが大切である。お互いに歩み寄る必要もある。空気が読めない生徒は、質問に誠実に答える。誠実過ぎて周りから詰られてしまう。その経験の積み重ねが、性格などにも影響を与えてしまうこともある。「注意欠陥多動性障害」は、最近では「注意欠如多動症」という言葉になっている。忘れっぽい、落ち着きがない、我慢ができないなど、実は誰もがもっているものであるが、あまりに生活に支障があるから障害となる。わざとやっているわけではなく、気が付いたらやっているというものである。本人が気付いた時は、困った状況にある時である。本人は、必ず叱られることになってしまう。
「学習障害」については、その生徒が劣等感をもち、いじめの対象となることもある。例えば脳の機能に障害がない人が、「『サイ』を書け」と言われて、全体像はイメージできるが、細部は書けないのと同じような感覚であると言われている。支援のカギは、丁寧さと工夫である。
「発達障害かな?」と思っても、「個人攻撃の罠」にはまらないことが大切である。本人や保護者を責めても意味がない。専門家を上手に活用して、早期発見、早期支援をすることで状況が良くなることがある。早期支援の第一歩は正しく「理解」することである。
日本の子育て文化の特徴として、「みんなと一緒」を重んじる、「みんなと一緒」にできて「当たり前」という考え方がある。そこには同時に、「当たり前」の罠がある。「当たり前」ができないと叱られ、「当たり前」だから教えてもらえず、「当たり前」だからできても褒めてもらえない。
発達障害の生徒には、教えて褒めてあげることがとても大切である。叱ることで解決してしまいがちだが、それは不適切な教育である。例え話は厳禁、具体的でないと生徒は混乱する。
叱ることのリスクとして、例えば体罰を受け続けると、脳が委縮してしまうことが分かっている。厳格な体罰を受けることにより、右前頭前野が19.1%萎縮するという研究報告がある。論理的に考える働きをする部分が萎縮するのである。また、暴言を受けることにより、左上則回頭が14.1%私淑する。ここは、音の高低を聴き分けたり、言葉を理解したりする部分である。体罰を受けてきた生徒が発達障害と思われることがある。まずは生育歴や家庭環境に気を配って観察したりすることが大切である。叱ることによって、そこには教育はない。
それでもどうしても叱ってしまうという人は、叱る代わりに教えるという意識を大切にしてほしい。「~をやめなさい」という言葉を、「~をしましょう」という言葉にするなどの置き換えが大切である。叱ってしまいそうになったら一旦その場から立ち去ってみて、離れて考えてから、その場に戻って向きあうことも有効である。
また学校の取り組みとして、子ども自身に行動や態度をチェックさせることも重要である。子どもの特性を捉えることに繋がる。対人関係に困難さが見られる子どもに対しては、ソーシャルスキルトレーニングやアンガーマネージメント、タイムアウトなどを導入することも一つの手段である。
失敗経験の積み重ねが、自尊感情や自己有力感の低下を招き、二次障害の問題へと繋がってしまう。「あなたも周りの大人と同じですか・・」と思われるか、「あなたの音楽を聴けてよかった・・」と思われるか。音楽の価値を明確にして指導をしていってほしい。
3 まとめにかえて
発達障害の生徒には、認めて、褒めてあげることが最も重要である。当たり前のことであっても、きちんと伝えることが第一歩である。例えば音楽の授業においては、言葉だけでなく、いつも歌ったり楽器に触れたりしながら音楽に触れ合うようにしてほしい。ノンバーバルなコミュニケーションを意識的に心掛けてほしい。対話をし、演奏をしながら音を出して振り返ることで、学習の積み重ねができる。みんなで一緒に役割をもちながら取り組むことが「協働」である。
分かっていることが分かる、できたことが分かる、という「メタ認知」を促せるようにすることが大切である。気付きから始まる理解ができるようにしてほしい。それは、「困った子ども」ではなく「困っている子ども」という認識ができるようにということである。保護者への伝え方も、見方を少し変えて、言い方を変えて行うことで協力を得られる。障害に立ち向かうのは本人であり、それを支えるのが保護者、そうした営みに必要な知識や技術を提供するのが教員の役割である。
実技演習 合唱演習「授業におけるアカペラ合唱指導」(群馬県立二葉特別支援学校長 清水 郁代 先生)
(教材:「夢みたものは」)
①歌詞
全員で最初に歌詞だけが掲載されている部分を見て音読し、感情を込めることによって歌詞の状況をイメージできるようにする。例えば、「夢は何色?」「ステージでスポットライトを浴びている気持ちで読んで」「デートについての歌詞だけれど、〇〇君はどんな時に心がときめく?」など、全員で音読しても、一人一人が主体的に考えながら活動できるように促す。今回の歌詞であれば、ソネット形式や歴史的仮名遣い、作詞者の背景などのポイントにも触れながら指導していく。動詞をはっきりと歌えるようにする。「『大きな丸い輪』の部分に円を3つ書いてみて」「最後の『ここに』は足踏みして」というように、歌詞を図にしたり、体を使って表したりすることで、より具体的なイメージをもちながら音楽表現の工夫へと結び付けられるようにする。歌詞の内容をしっかりと読み取ることで、歌を通して世界が広がる。
②導入
あまりピアノに頼らずに音取りをする。生徒の実態によっては難しいこともあるので、補助的に鍵盤楽器を使う。パートが分かれる合唱では、全員でそれぞれのパートを初めに歌うことが多い。例えば、最初に細かいところを指導せずに全員でソプラノを歌った後、「よく最初入れたね!この曲のテンポはいくつ?」などと着目してほしいポイントを、楽譜と照らし合わせながら確認する。
③発音
「ゆ」は「IYU」、「ひ」は「HHI」、「が」は「NGA」、「そ」は「SSO」、「わ」は「UWA」などを楽譜に書いて注意を促し、発音できるようにする。特に「が」の鼻濁音は、群馬県の人は苦手なのでやさしく歌えるように、例を示しながら取り組む。「あ」の母音は口の中を開けるようにする。「ウ」の母音は口をとがらせて歌う。母音を拍の頭で歌えるようにする。鏡を見ながら口の開け方を確認するのは、特に女子では効果的である。子音は0.3秒でさばけるようにする。言葉を生かすためには母音唱をすると効果的である。「ねがった」の「た」のような促音の後の言葉は聴こえにくくなるので注意する。発音が強くなりがちなところはあえて強く歌ってみて、その不自然さに気付けるようにする。
④声部
アルトを歌う生徒の中には、ソプラノを歌いたかった生徒もいる。「ソプラノが素敵で美しく聴こえるにはアルトのお陰だよ」とモチベーションを高めるようにする。あるパートが歌い終わった時に、他のパートに「今の歌はどうだった?」と意見を聞くようにすると、歌っていないパートの生徒も集中できる。他パートが伸ばしている時に動くパートは、そこだけ取り出して全員で歌ってみるなど、大切であることを全体で共有できるようにする。最後の「と」で伸ばすところは、テノール以外同じ音なのに、声量感があることに気付けるようにし、ハーモニーの大切さを意識できるようにする。
⑤呼吸
⑥音程
低い音から高い音へと跳躍する部分では、高い音の方に集中しがちであるが、低い音をしっかり出せるようにする。高い音程で連続して歌う部分は、特にソプラノは突き刺さないようにやわらかく歌えるようにする。ハーモニーが美しく響くところはその部分を抜き出しながら、なぜそこが美しく聴こえるのかをそれぞれのパートの音を取り出しながら意識して歌えるようにする。例えば「音が次第に上がっていく部分は喜びの表現」など、歌詞とも関わらせながら音程の指導をすると強弱の工夫などにも繋がっていく。「音が順次進行で下がるところは宝塚の階段を下りるように」など、音程と情景とを関わらせてイメージをもてるようにする。
⑦フレーズ
フレーズが切れそうになるところや、次に向かっていってほしいところには、豚のしっぽのようなマークを楽譜に書くように指導する。歌詞の内容や言葉の繋がりを見ながら、不自然なところでブレスをしていないかどうかもチェックする。「あ」や「お」の母音で伸ばすところは、フレーズが止まりやすいので注意する。「愛」という歌詞の部分は「ハート」などの形を具体的にイメージすることで、フレーズがやさしく落ち着く感じが出せる。
班別協議 「音楽の4分野(歌唱・器楽・創作・鑑賞)における『主体的・対話的で深い学び』について」
昨年度の夏季研究会では、「アクティブ・ラーニング」について情報交換を行った。昨今、「アクティブ・ラーニング」という言葉が、「主体的・協働的な学び」と統一されるようになってきた。その中で、「主体的・対話的で深い学び」という言葉も整理されてきたことを踏まえ、音楽の授業における「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」それぞれを促す学習活動を、音楽の4分野(歌唱・器楽・創作・鑑賞)の指導事項と関わらせながら班別で考えた。
講評
島田 聡 先生(群馬県教育委員会高校教育課指導主事)
主体的に学習に取り組む態度については、「生徒が自ら学習の目標を持ち、進め方を見直しながら学習を進め、その過程を評価して新たな学習につなげる」とあるように、学習課題を生徒自身の気付きによって設定することが大切である。生徒の気付き、疑問から授業を計画し、授業全体の流れ、見通しをもって取り組み、振り返ってみて「こんな風に力が付いた」や「こんなことが足りていない」ということを認識できるようにしたい。自分がどういう状態であるかということを認識(=メタ認知)することで、次は何をしなければならないのかを知ることができ、学習の意義が分かる。学習の意義を教員も生徒も知っていながら授業を行うことが大切である。「この授業を行うことで生徒にこんな力が付く、社会に出た時にもこんなことに役立つ」ということを生徒にもしっかりと伝えてほしい。
その一方で、主体的に学習に取り組む態度は音楽では既に行っている内容ではないだろうかとも考える。例えば全日音研の群馬大会では、饗庭先生が「'O sole mio」を歌唱の授業で取り上げた。その題材の導入は、ポップスや民謡と比較することでふさわしい発声方法について課題をもつものであった。そして楽曲にふさわしい発声について、実際に仲間と歌い合ったり聴き合ったりしながら試行錯誤を行った。その中で楽曲の種類によって身体の使い方が異なることに気付き、さらに実際の声で試行錯誤し、のどの開け方や呼吸の仕方などの必要な技能の習得へと学習が展開されていく授業であった。比較することがきっかけとなり、学習課題を整理し、生徒が自分たちの力で必要なものを精査し学びに繋がった。その中で対話的な学びの必要性が生じてくる。
深い学びの視点については、主体的な学びや対話的な学び、そして普段の授業構成を考える視点の一つ上の概念であると捉えられる。授業で学んだ知識・技能を生かして次の学びへと繋げられるようにしていくことの大切さに関わることである。それはつまり、音楽と生活とを関連させるための学びであり、生きて働く知識・技能の習得を図るものである。
参加者(敬称略・順不同)
廣澤 秀伸(前橋西) 大熊 信彦(太田女子) 清田 和泉(吾妻特) 清水 郁代(二葉特)
大小原美幸(高高特) 五十嵐桃子(長野原) 勝山 英城(万場) 兒玉 理紗(高崎女子)
前島 律子(あさひ特) 今井 なおみ(前橋特) 品川 淳子(前橋特) 斎藤真里奈(沼田女子)
根岸 玲恵(西邑楽) 千明 昇平(西邑楽) 髙木 佳子(伊清明) 鈴木香奈子(桐生南)
小川 唯佳(利根商業) 川上 寛子(玉村) 大谷 邦子(下仁田) 饗庭 麻里(市立太田)
萩原 美幸(高高特) 藤嶋 啓子(関学附属) 伴野 和章(太田東) 小川 良介(四ツ葉)
井上 春美(藤岡中央) 青柳 亮(桐生女子) 住谷 伴(前橋商業) 内林 美里(伊高特)
岡松 亮 (館林特) 野口 瑞穂(大間々) 北島 意三(渡良瀬特) 富岡 恵美(安中総合)
中畑 香映(太田女子) 森村恭一郎(個人会員) 坂本 将(館林女子) 菊池 博之(教育芸術社)
八束 周太(教育芸術社)
群馬県高等学校芸術祭音楽部門団体演奏会
本年度は新たな試みとして、合唱及び器楽演奏を専門分野とする方をそれぞれ1名ずつ招聘し、2名の先生方から講評をいただいた結果、出演生徒はより充実したアドバイスを受けることができました。特に夏のコンクールに向けてのよい機会となり、意義のある演奏会となりました。また、コンクールを意識しない選曲をする団体もあり、その演奏は演奏校の想いが伝わるものでありました。いずれの団体も音楽に対する真摯な態度を感じる演奏でしたが、演奏技術の向上という点でも目を見張るものがありました。吹奏楽の部では各校の演奏力はいずれも優れたものであり、群馬の演奏レベルは着実に上がってきていると感じさせました。
○ 器楽(和太鼓)の部
1 群馬県立渋川特別支援学校
烈風
○ 吹奏楽 午前の部
1 群馬県立伊勢崎高等学校 指揮 前田 英一
セルゲイ・モンタージュ 作曲 鈴木 英史
2 群馬県立高崎高等学校 指揮 西村 淳也
弦楽四重奏曲第2番「内緒の手紙」より 作曲 L.ヤナーチェク
編曲 西村 淳也
3 利根沼田学校組合立利根商業高等学校 指揮 小川 唯佳
白墨の輪へのオマージュ ~グルシェの愛~ 作曲 福島 弘和
4 群馬県立前橋西高等学校 指揮 朝倉 康雄
梁塵秘抄~熊野古道の幻想~ 作曲 福島 弘和
5 群馬県立富岡高等学校・群馬県立富岡東高等学校 指揮 米山 伊織
さくらの花が咲く頃 作曲 真島 俊夫
6 群馬県立前橋高等学校 指揮 東 喜峰
LET IT BE 作曲 J.レノン&P.マッカートニー
シング シング シング 作曲 L.プリマ
編曲 岩井直溥
7 群馬県立館林女子高等学校 指揮 坂本 将
眠るヴィシュヌの木 作曲 樽屋 雅徳
8 群馬県立前橋女子高等学校 指揮 笠原 新一
ラッキードラゴン~第五福竜丸の記憶~ 作曲 福島 弘和
9 高崎健康福祉大学高崎高等学校 指揮 吉田 宏昭
マーチ・シャイニング・ロード 作曲 木内 涼
ディスコ・キッド 作曲 東海林 修
○ 合唱の部
1 群馬県立吉井高等学校 指揮 須田 諭美
四つのイタリアのマドリガルより 作曲 Z.コダーイ
「愛を抱くものよ」「美しいかごから」
2 群馬県立藤岡中央高等学校・群馬県立西邑楽高等学校 指揮 井上 春美
Aveverum 作曲 F.プーランク
CIROKA 作曲 Z.コダーイ
ほたるたんじょう 作詞 くどう なおこ
作曲 木下 牧子
3 東京農業大学第二高等学校 指揮 原 鏡
星屑の街 作詞 安岡 優
作曲 北山 陽一
蕾 作詞 小渕 健太郎
作曲 小渕 健太郎
4 群馬県立太田女子高等学校 指揮 多田 あやか
君が君に歌う歌 作詞 E.ウッドストック
作曲 大島 ミチル
5 群馬県立渋川女子高等学校 指揮 荒木 奈都子
無伴奏女声合唱組曲「浮舟」より 匂宮 作曲 西村 朗
~講師プロフィール~
土田 豊貴(つちだ とよたか)
1981年、東京生まれ。桐朋学園大学音楽学部・カレッジディプロマ作曲科修了。2010年、女声合唱とピアノのための「夢のうちそと」で第21回朝日作曲賞を受賞。第81、83回NHK全国学校音楽コンクール・スペシャルステージの編曲を担当。近年、合唱曲を中心に多くの委嘱作品を手掛ける傍ら、コンクール、合唱祭、講習会等の各種審査員、講師を務めている。近作には女声合唱・笙・ピアノのための「牡丹一華」、女声合唱とピアノのための「フモレスケ」、無伴奏混声合唱のための「あなたのために歌うべく」等。これまでに作曲を法倉雅紀、鈴木輝昭、指揮を故・岡部守弘、高関健、ピアノの三輪郁の各氏に師事。「THEATRE EN VOIX」同人。
松下 裕幸(まつした ひろゆき)
東京芸大を経て1993年群馬交響楽団に入団、現在チューバ第一奏者を務める。第6回日本管打楽器コンクール第3位、国際ユーフォニアム、チューバ札幌大会ソロコンクール第2位にそれぞれ入賞。2013年に鈴木織衛指揮群馬交響楽団とヴォーンウィリアムズ作曲のチューバ協奏曲を共演、好評を博す。
これまでにチューバを、河口安伯、安元弘行、大石清、稲川栄一の各氏に師事。参加者(敬称略・順不同)
廣澤秀伸(前西) 大熊信彦(太女) 松村正史(桐特) 清水郁代(二葉特) 鈴木香奈子(桐南)
黒岩伸枝(高崎) 増尾和俊(太田) 酒井佑香(渋特) 前田英一(伊勢崎) 西村淳也(高崎)
小川唯佳(利根商) 朝倉康雄(前西) 米山伊織(富岡) 東 喜峰(前橋) 坂本 将(館女)
金田英樹(前女) 春山貴子(前女) 吉田宏昭(健大高崎) J・バドリック(中央中等)
青栁 亮(桐女) 金井 優(藤中) 牧野 勇(前東) 饗庭麻里(市立太田) 伴野和章(太東) 飯嶋 肇(渋女) 松本誠仁(太女) 須田諭美(吉井) 戸松久実(吉井) 矢嶋正則(大泉)
小川一郎(館林) 井上春美(藤中) 根岸玲恵(西邑楽) 福田 望(東農大二) 中畑香映(太女) 多田あやか(太女) 荒木奈都子(渋女)第2回授業研究会
平成29年度第2回授業研究会
平成29年7月6日(木)に群馬県立高崎高等特別支援学校の 目崎 ちひろ 教諭により、第2回授業研究会が行われました。生産園芸科2年3組の生徒8名によるミュージカル合唱~登場人物の気持ちを歌で表現してみよう~を教材とした歌唱指導が行われました。
(1)授業説明(目崎教諭)
生徒数8名。農業中心の学習をしていて、意見は沢山出るクラスである。今日は大勢の人がいて緊張したようだ。うちに籠もる生徒もいたが、ピアノ披露をした生徒もいた。週2時間で、今回はクラス単位での授業である。前時までに登場人物の感情を考えている。劇団四季のCDを鑑賞させ、自分たちはどのように表現するべきか考える。観点を3つ提示する。セリフで読む意味は、歌にすると音程などに気が取られてしまうためである。スモールステップを踏ませる。表情カードを用いている。「嬉しい」、「楽しい」、「悲しい」、「怒る」の4種類。
セリフになるのが難しかった。真ん中の生徒に引きずられた印象はある。今の段階では、セリフにするのは早く、もっと時間を取っていくべきだと感じた。表情を読み取るのが難しい中、表情カードは手助けになる。ツールが何も無い状態より、はるかに良い。これからも継続使用していくつもりである。
自立活動について。どの教科でもこれを取り入れている。コミュニケーション能力の向上を図る役割もある。自分で答えを見つけるのは難しいが、CDや教員の見本を見て考えることによって、生徒にとってもわかりやすくなった。観点をしぼることや、選択肢を与えることで手掛かりになる。
合唱をひとつにまとめていくために、どのような手段を用いているのか教えていただきたい。
(2)研究協議
授業前に研究係から以下の2つの視点を提示し、どちらかの視点をグループで選択し、各校の現状等も踏まえながら協議を行った。
【授業研究の視点】
1、歌唱表現を深める手段として歌詞を台詞として読んだことは有効であったか。
2、曲想をイメージとして共有するために、表情カードを使用したことは有効であったか。
(3)指導・助言等
① 島田 聡 先生(群馬県教育委員会高校教育課指導主事)
歌唱表現を深めるために十分有効であった。台詞として読むことが、歌詞の内容を感じ取るきっかけになっていた。命令調のところは音を切る、など教員の補助はあれど生徒がそれを導いていた。半数で歌うことで、自分たちの演奏を客観的に聴く姿勢が癖づいていく。各生徒に合わせた評価、いわゆるルーブリック評価。正確な評価をするためにも普通高校でも行うべきものである。
先生と生徒の友好関係ができているため、やりとりに無理がない。先生の発問に対して、教員の「なぜ大きく歌うの?小さく歌うとどうなる?」という問いかけに対して、「楽しくない!」と生徒が発言するなどの場面が見られた。どのように聴かせたいか、そのためにはどのように演奏したらよいか、という思考の流れになっていく。観点を出さずに、どのように演奏されているか考えさせCDを聴かせても良いのではないか。また、生徒の意見を掘り下げる場面も題材のどこかであるといい。考えたことをワンフレーズでも良いからすぐ再現してみる。そうすると、生徒が振り返りやすい。暖かい雰囲気の中で、合唱が仕上がっていく様子が見て取れた。
② 藤生指導主事
黒板左端のカードに提示されたルーティンワークの大切さや、めあての明確な確認。大いに評価できる。先を見通せないことに不安を抱く生徒が多いため、このような配慮は大切である。先生と生徒の関係性に関して。先生が「話してもいいですか」と言って生徒の集中を促した。集中力が散漫になりやすい生徒にはしっかりと示すことが必要である。
表情カードに関して。言葉だけではなく、文字・イラストなどを用いることでイメージがしやすくなる。また、ぼんやりしていたことが明確になるため有効である。選択しなかったものを外すのも整理されて見やすい。板書等の視覚情報を整理することも重要である。音の高低の認識に関して。小鳥の曲などを用いて、鉄琴を黒板に貼る。「低いと変だね」などの気づきをイメージ化させる等の手立ても有効である。大切なのは、どの曲を取り上げるか、どれが最も有効なのか選定すること。
生徒たちは就労が目前である。自分を表現できる力、自己決定力をつけることが必須。音楽はその面でもとても大切である。音楽を通して社会人としての力を育ててほしい。最後に、男女で「さん」「君」を言い分けることはこれからどうなのだろう。
(4)参加者(敬称略・順不同)
廣澤秀伸(前橋西)上田裕信(太田東)大熊信彦(太女)清水郁代(二葉特)朝倉康雄(前橋西)勝山秀城(万場)小川唯佳(利根商)
斎藤真里奈(沼女)髙木佳子(伊勢崎清明)住谷伴(前商)坂本将(館女)饗庭麻里(市立太田)岡松亮(館林高特)前島律子(あさひ特)
今井なおみ(前橋高特)西田えりか(赤城特)大沢知栄(聾)木部誠(しろがね特)北爪優香(太田特)力石泉(二葉高特)
須田玲子(渡良瀬特)飯島千尋(渡良瀬特)井上春美(藤岡中央)藤嶋啓子(関学附)東喜峰(県立前橋)千明昇平(西邑楽)
(個人情報保護の観点から授業風景の写真の掲載は見合わせました)
第1回授業研究会
平成29年6月19日(月)に群馬県立伊勢崎商業高等学校の 武井 康博 教諭により、第1回授業研究会が行われました。情報処理科の3年7組の音楽選択者12名による音楽Ⅰの「イタリア語の歌曲を歌おう」のテーマにより「caro mio ben」を教材とした歌唱指導が行われました。
(1)授業説明(武井教諭)
1学期は歌唱の授業を中心に行っている。これまで校歌や教科書に載っているJ-POPなどを教材として扱ってきた。1、2年生では音楽の授業がなく、中学校の音楽の授業から2年間のブランクがあるので、歌唱の技術的なことをまずは確認するようにしている。また、それぞれの曲に込められた気持ちを感じ取って歌うことで、自身の思いや意図をもてるようにしている。
今回は生徒にとって初めて本格的な独唱を扱う題材となる。1人でイタリア歌曲を歌うということに抵抗を感じている生徒もいるようである。しかし、実際に楽曲の練習に取り組むようになると、興味・関心を増して休み時間に廊下等で歌っている姿も見られた。今回の授業は独唱ということで、生徒それぞれでの音楽表現を追求していくことを目標とする。最終的には独唱で表現できるように、その手段としてまずはグループ3人程度で歌い、それを聴いてお互いにコメントをし合う。その後、「今度はこういう風に歌おう」など考えられるように支援をしていく。
題材の第1時ではイタリア語の読み方、言葉のもつ響きを考えられるようにした。第2時では、テノール歌手の演奏を聴いて、特徴のある歌声を味わえるようにし、テンポ感や歌い方の違いをまとめた。そしてグループで歌い方の工夫を話し合った。本時は、歌詞と旋律との結び付きをまずは全体で考え、自分の表現の糸口を見出し、最終的には自分の表現したいこと等をまとめて、独唱で歌ってどのように変わったかを見取りたい。初めての題材ということで未知数なところがあるが、いろいろなご意見を頂きたい。
(2)研究協議
授業前に研究係から、研究授業を観る「研究協議の視点」を提示しておき、授業研究でグループになった時にそれぞれのグループで1~2つの視点を選びながら協議を行いました。
「研究協議の視点」
〇本時の目標は達成できていたか 〇課題の質やレベルは適切であったか 〇評価の計画は適切であったか 〇主体的・協働的に取り組む展開・内容になっていたか |
(3)指導・助言等
島田 聡 先生(群馬県教育委員会高校教育課指導主事)※抜粋
教師の意識付けについて、例えば「こうだよね、ここに注目するんだよ、ここを大切に歌おう」などの学習内容を生徒が意識して歌っていたか、これを考えていきたい。12人の生徒はいろいろなことを感じることができた。しかし、理解して感じるところまでもっていきたかった。何を理解するのかというと、歌詞の内容と関わらせた音楽を形づくっている要素についてである。
配布させて頂いた中教審答申の「深い学びの視点」の3行目に「~知覚・感受したことを言葉や体の動きなどで表したり比較したり関連付けたりしながら、~このことが、~どのように音楽で表すかについて表現意図を持つこと、~」という文言がある。このことに注目してほしい。「世界に一つだけの花」を歌った時、AメロBメロでBメロに入った瞬間に雰囲気が変わった。そうした生徒の資質・能力があれば、もっと本時の授業の中で生徒は変わったのではないかと思う。
伴奏のリズムを変えて演奏したことは、とても効果的な手立てであった。強弱についても同じように行ってみてもよい。旋律のもつ方向性や強弱、リズムについては、グループで長く時間を取り過ぎず、いったん終わりにして全体で確認したい。授業の後半は音がほとんど無かった。先生が伴奏を弾き始めたところで生徒の歌が聞こえた。音とともに学習が進むのではないかと感じる。
本時の学習目標をどのように生徒と共有するかが課題である。どうやったら生徒が興味をもって授業の内容に食いついてくるかを考えるようにしたい。生徒が自分から学びに向かう姿勢を作るにはどうしたらよいのかということである。全員で歌った後に模範のカレーラスのCDを聴き、「みんなの演奏とCDは何が違うの?」という発問をし、「歌い方」という発言が出てくるような仕掛けも大切である。出てこないようであれば、「先生はこう思う」と修正をしてもよい。そこから「カレーラスの声に近づける為には何が必要なのか?」という仕掛けが必要となる。
本時の内容である旋律のもつ可能性を探るのであれば「ジョルダーニがこの旋律線を作った秘密を考えよう」という問いを提示することも手立ての一つである。そうすることで、旋律と歌詞の内容がマッチしていることに生徒が気付くことができるような授業展開ができる。
学習形態については、協働学習や対話的な学びと言われているが、単にグループ活動があればよいわけではない。グループで学ぶ必然性があるかどうかが大切である。それを点検してもらいたい。とりあえず4人で集まってやろう、というわけではなく、4人で集まってやらなければいけない学習内容がそこにあるかどうかを考えてほしい。1人で取り組んで解決できるような学習内容では、4人で取り組む必要はない。グループで活動して、話に花が咲いて時間が流れることがないようにしてほしい。協働的な学びや対話的な学びはこれからも注目されることになるので、その点を肝に銘じてほしい。音楽は協働的な学びや対話的な学びを設定しやすいが、ただ行っているのではなく、4人で行う必要があるから取り入れているという姿勢をもってほしい。
参加者(敬称略 順不同)
廣澤 秀伸(前橋西) 清田 和泉(吾妻特支) 上田 裕信(太田東) 島田 聡(高校教育課)
朝倉 康雄(前橋西) 黒岩 伸枝(高崎) 野口 瑞穂(大間々) 鈴木香奈子(桐生南)
小川 唯佳(利根商業) 武井 康博(伊勢崎商業) 大小原美幸(高高特支) 松平 康子(尾瀬)
児玉 理紗(高崎女子) 斎藤真理奈(沼田女子) 勝山 英城(万場) 藤嶋 啓子(関学附)
髙木 佳子(伊勢崎清明) 大谷 邦子(下仁田) 西田えりか(赤城特支) 川上 寛子(玉村)
住谷 伴(前橋商業) 後藤 順子(前橋南) 中畑 香映(太田女子) 根岸 玲恵(西邑楽)
須田 玲子(渡良瀬特支) 坂本 将(館林女子) 井上 春美(藤岡中央)
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